研究実績の概要 |
重症型魚鱗癬の多くの症例が含まれる、常染色体劣性先天性魚鱗癬(autosomal recessive congenital ichthyosis: ARCI)の病因遺伝子としてはABCA12,ALOXE3,ALOX12B,CYP4F22,PNPLA1,SDR9C7等の報告があり、表皮脂質、特にセラミド合成に関連する遺伝子の関与については少しずつ明らかになってきているが、表皮脂質の異常が魚鱗癬の臨床像を来すそのメカニズムについてはまだ不明な点が多く、根治療法も確立されていない。セラミドは表皮透過バリアの構成成分となるだけでなく、表皮における情報伝達をつかさどるメディエーターとしての役割もあることが明らかになってきているが、本研究では、近年皮膚や皮膚疾患に対する新しい機能も報告されてきているリゾリン脂質やその関連酵素、シグナル伝達経路について、ARCIの病態とへの関与を明らかにすることを目的とした。本年度は前年度に引き続き、当教室の保有する複数の種類のARCIマウスモデルについて、表皮脂質や皮膚および皮膚附属器の分化に関連する遺伝子および蛋白の発現についての解析、特に表皮におけるリゾリン脂質やその関連遺伝子および蛋白の発現について解析を進めている。また新規ARCI表皮モデル作成にも取り組み継続中である。本研究を通して表皮細胞の分化調節に関わる脂質メディエーターとしてのリゾリン脂質について、リゾリン脂質やその関連酵素、シグナル伝達経路がARCI の病態にもたらす役割について明らかにすることを目的としている。
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