本研究では、花粉症患者の一部で生じる花粉-食物アレルギー症候群の病態解明に向け、シラカバ花粉感作-リンゴ食物アレルギーモデルマウスの作製を試みた。 シラカバ花粉を0.1%のTriton X-100を含むリン酸緩衝液と混和することでシラカバ花粉タンパク質抽出物 (BPE) を調製した。このBPE 50 μgとアラムアジュバント (Alum) を混合し、雌性BALB/cマウスに対して7日毎に3回腹腔内投与することで腹腔内感作を行った。非感作群にはAlumのみを腹腔内に投与した。最終の感作処置から1週後にBPE 500 μgを腹腔内に負荷すると、BPE感作群では投与30分後に平均2.6℃の直腸温低下が生じ、非感作群よりも有意な変化が見られた。また、負荷試験終了後に血漿中mouse mast cell protease-1 (mMCP-1) 濃度を測定すると、非感作群での平均10.0 ng/mLに対し、BPE感作群では平均1039.5 ng/mLと大きく増加し、マスト細胞の脱顆粒が生じたことが示唆された。 同様にBPE腹腔内感作を行ったマウスに対し、1週間毎に2回のリンゴタンパク質 (AP) 腹腔内負荷を行った。その結果、AP負荷による直腸温低下は見られなかったが、2回目の負荷試験後に採取した血漿中のmMCP-1濃度は非感作群の平均22.6 ng/mLに対し、BPE感作群では平均97.2 ng/mLと増加傾向が見られた。さらに、阻害免疫ブロットにおいて、APの30 kDaタンパク質に対するBPE感作マウス血漿中IgEの結合が、阻害剤としたBPEの濃度依存的に減弱した。これらの結果から、BPE腹腔内感作においては、APの30 kDaタンパク質に対して交差反応を示す抗BPE-IgE抗体が産生され、負荷試験時には交差反応による軽度なマスト細胞の脱顆粒が生じていることが示唆された。
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