研究課題/領域番号 |
22K16274
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
松尾 梨沙 旭川医科大学, 医学部, 客員講師 (70624188)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 血管新生 / 糖尿病 / 創傷治癒 / 周細胞 |
研究実績の概要 |
血管は管腔を形成する血管内皮細胞と周囲を被覆する周細胞で構成される。組織障害時に生じる血管新生の過程では、内皮細胞の出芽により未熟な新生血管が形成されるが、周細胞が接着することで血管が成熟化し、血液のある機能的な血管が形成される。我々はこれまで、周細胞に発現するNinjurin-1(Ninj1)が創傷治癒と機能的血管の形成に関わることを見出した。 一方で、糖尿病マウスでは一般に創傷治癒が遅延し、毛細血管では周細胞の減少、当科性更新などの機能異常が報告されている。糖尿病マウスの組織ではNinj1が過剰に発現しており、糖尿病の創傷治癒遅延に影響している可能性を考えた。 本研究では、糖尿病の創傷治癒遅延とNinj1の関わりをテーマとし、①糖尿病の創傷治癒遅延とNinj1の関連性について、②Ninj1の機能を外用剤で調整することで糖尿病の創傷治癒にどのように影響するか、の2点について主に解析する。また、これまでの研究でNinj1が表皮細胞にも発現していることから、③表皮細胞におけるNinj1の役割についても検討する。 本研究では過剰に発現するNinj1を局所的に制御する試みとして、Ninj1の細胞外ドメインペプチドを徐放する外用剤を作成することを目標としている。昨年度は予備実験として糖尿病マウスの正常皮膚および創傷における新生血管の観察を行った。本年度では本実験に重要なNinj1ペプチド含有徐放粒子(PLGAナノ粒子)の作成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Ninj1ペプチド含有徐放粒子(PLGAナノ粒子)の作成に時間を要したことから、実験の進行が予定よりやや遅れている。それに伴い動物実験の開始もやや遅れている。 今年度でNinj1ペプチド含有徐放粒子の作成が完了したため、今後はNinj1ペプチド含有徐放粒子が創傷に機能するか評価を行い、外用剤の至適条件の検討を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
我々のこれまでの研究から、Ninj1が表皮細胞に発現していることを見出しているが、表皮細胞におけるNinj1の役割を解明するには至っていない。そこでヒト表皮細胞を用いて細胞実験を行い、創傷治癒に関わる条件下においてNinj1の発現がどのように変化するか解析し、表皮細胞におけるNinj1の機能について検証する。 次に表皮細胞にNinj1ペプチド含有徐放粒子を用いて至適条件の検討と外用剤への応用について検討する。まずヒト表皮細胞を用いてNinj1ペプチド含有徐放粒子が創傷治癒や分化誘導にどのような影響を及ぼすか評価し、Ninj1ペプチドの至適濃度および至適条件についても併せて予備実験を行う。 また、次にNinj1ペプチド含有徐放粒子をマウスの創傷に局所注射し、創傷治癒における機能やNinj1の発現に与える影響を評価する。次にNinj1ペプチド含有徐放粒子を基剤と混合して外用剤の作成を試みる。至適濃度や基剤の条件検討を行ったのち、糖尿病マウスの創傷に塗布し、創傷治癒に差があるかどうかコントロール群(Ninj1ペプチドを含有しないPLGA粒子含有外用剤を塗布した糖尿病マウス)と比較する。 Ninj1ペプチド含有徐放粒子を外用した糖尿病マウスで創傷治癒の促進が認められた場合、潰瘍の病理組織学的評価や創傷周辺の新生血管の3次元的な観察を行う。新生血管については、血流を伴う機能的血管の形成と周細胞の接着に着目し、創傷治癒促進の機序について解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Ninj1ペプチド含有徐放粒子の作成が遅れたことや、申請者の多忙で動物実験の進行が遅れていることが、次年度使用額が生じた主な理由である。本年度でNinj1ペプチド含有徐放粒子の作成が終了したため、以後予定している至適条件の検討や外用剤への応用について今後実験を進めていく予定である。Ninj1ペプチド含有徐放粒子を用いた予備実験および糖尿病マウスに外用剤を用いた本実験において、実験動物の繁殖・管理や創傷治癒実験に必要な物品費として使用する予定である。
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