研究実績の概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)や皮膚筋炎ではI型インターフェロン(IFN)が病態に関与する。I型IFNは代表的レトロトランスポゾンである長鎖散在反復配列(LINE-1)もI型IFN産生を誘導する。近年申請者は健常人比較して、皮膚筋炎、SLE患者の白血球におけるIFN-α2, β1の有意なmRNAの上昇を確認し、LINE-1 mRNAの発現上昇とI型IFN mRNA発現の強い相関を見出した。(Kuriyama,Sci Rep,2021)。複数の培養細胞株を用いて(A431、NP-2、G361、HaCaT等)RNAを抽出し、レトロトランスポゾンやIFNの遺伝子発現について解析する。 LINE-1には逆転写酵素(ORF2)がありその働きは不明である。他のウイルスとのインターアクションも報告されており(Shimizu A et al,JGV,2004)、皮膚での感染がよく研究されているHPVを対象とし、その組み込み(インテグレーション)にLINE-1が関連していないかを予備的に探索している。この時のIFN1上昇はLINE-1RNAを認識していると考えるが、これらの発現亢進したLINE-1の逆転写酵素(ORF2)が細胞内のRNAを本来の働きに従い実際に逆転写し組み込む可能性について検討している。この際、内在性の遺伝子ではゲノムDNAとの区別が困難であり(また偽遺伝子も多いため)、外来性の遺伝子として今回はHPVを対象としている。具体的にはLINE-1が亢進している皮膚筋炎患者皮膚において疣贅などの発現が見られた場合、これらの遺伝子の染色体への組み込みを観察するなどを考えている。また自己免疫性疾患のみならずLINE-1の低メチル化はヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の悪性化に関与している可能性がある。LINE-1の高発現やHPV感染に伴う皮膚腫瘍についての研究も追加し検討を行っている。
|