研究課題/領域番号 |
22K16280
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
織田 好子 神戸大学, 医学研究科, 助教 (90874082)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 質量分析 |
研究実績の概要 |
日光蕁麻疹は光線曝露後に、曝露された皮膚に限局して膨疹、紅斑やそう痒を生じる刺激誘発型蕁麻疹の一型である。原因波長を照射した自己血清を皮内投与すると、膨疹が形成される症例がみられることから、光線照射により血清中に生じる光抗原に対する即時型アレルギ一反応が発症機序と推定されている。本研究で我々は日光蕁麻疹における血清中の内因性光抗原の特定を目指している。 日光蕁麻疹の精査の一環として行われる、作用波長を照射した自己血清皮内テストの陽性反応は内因性光抗原の存在を示唆することにとどまり、以降この光抗原に関する研究はほとんど進んでいない。我々は、原因波長を照射した自己血清に対する免疫反応をin vitroで検出する方法として、好塩基球活性化試験を行った。自己血清皮内テストとは違い、患者好塩基球と健常者血清の反応を検出できるメリットがある。結果は、原因波長を照射した患者および健常者の血清の双方に対し、患者の好塩基球は陽性反応を示し、光線非照射血清には反応しなかった。一方、健常者の好塩基球は照射・非照射血清いずれにも反応しなかった。本患者の好塩基球活性化試験における陽性反応は、血清をあらかじめオマリズマブで吸着することにより陰性化したことから、IgE介在性と示唆された。さらに我々は、作用波長を照射した健常者血清を電気泳動し、患者血清を用いたウエスタンブロットを行い、患者血清中のIgEが結合するタンパク質バンドを検出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は好塩基球活性化試験において、患者好塩基球が作用波長を照射した健常者血清に陽性反応を示すことを確認した。その「作用波長照射後の血清」を電気泳動により分画し、メンブレン転写後に患者血清と反応させることにより、患者血清中のIgEが特異的に結合するバンドを検出している。さらに「作用波長照射後の血清」を二次元電気泳動を行ったところ、同じ分子量の位置に陽性反応を得た。そのspotを質量分析を行い、原因抗原の可能性のあるタンパクを検出している。そのタンパク(組換え発現体または精製品)を抗原として、患者血清を用いたdot blot法やimmunoblot法、ELISA法を行う予定である。 抗原が入手できない場合は、大腸菌やバキュロウイルスを用いた発現系やin vitro translationを用いて候補蛋白を合成し、さまざまな波長の光照射を行い、患者血清との反応を調べ、原因となっている内因性光抗原か否かを確定する。
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今後の研究の推進方策 |
日光蕁麻疹は原因波長が可視光線やUVA、UVBの領域内でも患者ごとにより異なる。過去には作用波長を照射した患者血漿をゲル濾過し、各分画を滅菌して、患者自身に皮内テストを行う方法にて分子量を精査した報告があるが、分子量は25から1000kDaと様々である。このように我々が同定しようとしている光抗原は患者ごとによって異なる可能性がある。 本研究では、二次元電気泳動と質量分析により、本患者の自己光抗原の同定を試みるとともに、更に患者をリクルートし、日光蕁麻疹における自己抗原の網羅的な解析を目指す。具体的には患者検体で行ってきた好塩基球活性化試験、ウエスタンブロット法、二次元電気泳動、質量分析を同様の手順で行い、作用波長によって抗原が異なるかを探索していく。 アレルギー反応において抗原は病態の本質であり、抗原を同定することは疾患の発症機序の解明、新たなin vitro診断法や治療法、予防法の確立につながることが期待されると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、二次元電気泳動と質量分析により、本患者の自己光抗原の同定を試みるとともに、更に患者をリクルートし、日光蕁麻疹における自己抗原の網羅的な解析を目指す。具体的にはこれまで患者検体で行ってきた好塩基球活性化試験、ウエスタンブロット法、二次元電気泳動、質量分析を同様の手順で行い、作用波長によって抗原が異なるかを探索していく予定であり、検体数が今後増える可能性があるため、次年度使用額が生じた請求とした。
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