研究実績の概要 |
2023年度は、5種類の変異型(W108R, H205R, C246S, H248N, V437GfsX4)のLIPHの発現ベクターを作製し、野生型も含めてそれぞれ培養細胞に過剰発現させて各種解析を行った。まず、細胞溶解液と培養液を用いたwestern blot法を行った結果、野生型および全ての変異型LIPH蛋白が細胞内で安定に発現していたが、3種類の変異型LIPH(W108R, H205R, V437GfsX4)は細胞外に全く分泌されないことがわかった。続いて、免疫沈降法で各変異型LIPHとC3ORF52との結合能を解析した結果、V437GfsX4変異型LIPHのみがC3ORF52との結合能を著しく喪失することがわかった。本結果は、2022年度の解析で得られた「LIPHがそのC末端でC3ORF52と結合する」という結果と矛盾しないと考えられた。さらに、アルカリフォスファターゼ標識したTGF-alphaの発現ベクターとLPA6受容体を共発現させた系で下流のシグナル伝達系の活性化について検討した結果、解析した5種類の変異型LIPHはいずれも同様に下流のシグナル伝達系を活性化する能力を失っていることが判明した。すなわち、変異型蛋白間で性質に違いはあるものの、機能喪失型という点においては共通であることが示唆された。最後に、抗C3ORF52抗体と健常人の頭部皮膚組織切片を用いて免疫染色を行ったところ、C3ORF52は毛包内毛根鞘のヘンレ層に最も強く発現していることが明らかになった。過去の研究で、LIPHも毛包内毛根鞘に発現していることが報告されていることから発現が重複することになり、毛包での発現パターンからもLIPHとC3ORF52が機能的に密接に関わっていることが示されたといえる。
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