研究課題
2022年度は、Apoptosis signal-regulating kinase 1(ASK1)と芳香族炭化水素受容体(AhR)発現の相関性とTh17/Th22分化について検討した。① イミキモド(IMQ)誘導性乾癬のASK1欠損マウスの感受性と野生型でのASK1とAhR発現:5%IMQ含有ベセルナクリームを毎日塗布すると、野生型マウスに比べASK1欠損マウスで乾癬症状が増悪化するが、4日後の野生型およびASK1欠損マウスの皮膚を抗ASK1抗体を用いて免疫組織学的解析を行った。しかし、ASK1の染まりが悪く有棘層かもはっきりしなかった。そこで、次に、その皮膚組織の溶解液をウエスタンブロット解析を行うと、ASK1欠損皮膚では、ASK1とロリクリン発現が低下し、AhR発現が増強されていた。ところが、AhRの下流のシグナルであるシトクロムP450(CYP)1A1とNF-E2 p45-related factor 2 (Nrf2)の発現は、共に減少していた。CYP1A1が増強していれば、乾癬症状増悪化と一致したのだが、その意味はさらに検討中である。② 野生型およびASK1欠損マウスでのTh17/Th22分化:上記の乾癬を誘導した皮膚のRNAを抽出しRT-qPCR解析を行うと、IL-22やIL-17発現の増強が見られた。そこで、野生型およびASK1欠損マウス由来ナイーブCD4+T細胞を、AhRのリガンドFICZ有無の各種Th22およびTh17分化条件下で固相化抗CD3抗体+抗CD28抗体で刺激すると、ASK1欠損していると、特にFICZ有でのTh22分化条件下でIL-22産生が増加していることが、FACSを用いた細胞内サイトカイン染色解析と培養上清のELISA解析により示された。この時、ウエスタンブロット解析より、ASK1欠損細胞では、AhR発現が高かった。以上より、ASK1欠損していると、T細胞でのAhR発現が増強されIL-22産生が増加し、角化細胞の増殖が促進され乾癬が増悪化する可能性が示された。ASK1欠損角化細胞でのAhR発現亢進の意味についてはさらに検討中である。
2: おおむね順調に進展している
Apoptosis signal-regulating kinase 1(ASK1)と芳香族炭化水素受容体(AhR)発現の相関性が明らかになってきたので、ほぼ計画の予定通り進んでいる。
2023年度:ASK1 は角化細胞でもAhR発現を抑制するかの検討① ASK1欠損マウスでの表皮角化細胞の分化と増殖:野生型およびASK1欠損マウスの尻尾の皮膚を剥がし角化細胞を調製し、Ca2+で刺激し細胞増殖への影響と、ウエスタンブロット解析によりASK1とAhR発現、角化細胞の分化マーカーの発現を解析する。② マウス角化細胞株PAM212での分化と増殖: CRISPR/Cas9でASK1発現を欠失したPAM212細胞を作製し、野生型PAM212細胞と共に、Ca2+で分化誘導し培養し、増殖とASK1とAhR、各種分化マーカーの発現を調べる。蛋白質合成やプロテオソーム、リソソーム阻害剤存在下で検討し、AhR発現の低下の作用機序を検討する。③ 内在性AhR発現への効果: PAM212に、野生型ASK-HAおよび恒常的活性型ASK-ΔN-HA、および、ドミナントネガティブ型ASK1-KR-HA発現ベクターを遺伝子導入後、ウエスタンブロットを行い、ASK1の内在性AhR発現と、上述の角化細胞の分化マーカー発現への効果を調べる。2024年度: ASK1による角化細胞分化誘導とAhRへの会合の検討① ASK1による角化細胞分化誘導におけるAhRの役割:CRISPR/Cas9でAhR発現を欠失したPAM212細胞を作製し、Ca2+刺激やASK1発現ベクターの遺伝子導入による角化細胞の分化への影響を内在性AhR発現の有無で調べる。② 再構成系でのASK1とAhRの会合:野生型および欠失型ASK1-HAとAhR-3xFLAG発現ベクターをHEK293T細胞に遺伝子導入し、タグに対する抗体で免疫沈降後ウエスタンブロットにより、両者の会合およびその部位を調べる。③ ASK1とAhRの会合: PAM212に、各種ASK1発現ベクターを遺伝子導入後、細胞溶解液を免疫沈降反応後AhRの抗体でウエスタンブロットを行い、内在性AhRが会合するか、その会合部位も検討する。次に、Ca2+で分化誘導したPAM212を用い、内在性のそれぞれの分子が会合するか検討する。
使用金額の端数を合わせることができなかったため、次年度使用が生じた。残金は、次年度の消耗品代に加えて使用する計画である。
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