研究課題
本研究ではX連鎖性鉄芽球性貧血(X-lineked sideroblastic anemia:XLSA)モデルマウスの作成と解析を主目的とした。予備実験でimproved genome-editing via oviductal nucleic acids delivery(i-GONAD)法によるAlas2遺伝子改変が可能であることを確認した後、遺伝子導入条件の最適化を行ってAlas2 R170LおよびR170H変異を持つマウスの作出を試みた。しかし、いずれのモデルも生後表現型解析が困難であることがわかった。赤血球前駆細胞株human umbilical cord blood-derived erythroid progenitors(HUDEP)-2細胞から樹立したXLSAモデル細胞(ALAS2 R170LおよびALAS2 R170H)の解析では、XLSAではヘム応答性転写抑制因子BACH1の発現上昇がグルタチオン合成低下を介してフェロトーシス感受性増大に関与することがわかった(Ono K et al. Sci Rep 2022)。また、プロテオーム解析をおこなったところ分化後のXLSAモデル細胞ではフェリチン、フェロポーチン、Iron responsive element/Iron regulatory protein(IRE/IRP)といった細胞内鉄バランスの維持機構の有意な発現変化を認めた。また、転写因子NRF1や赤血球造血のマスター制御因子GATA1、フェロトーシス制御因子FSP1の発現が高かった。これらの結果から、XLSAにおいて赤血球前駆細胞では複数のメカニズムでフェロトーシス感受性増大が代償されているとわかった。
3: やや遅れている
研究代表者のこれまでの研究でXLSAの病因遺伝子であるAlas2のエンハンサーヘミ欠損マウスは胎生致死であり表現型解析に不向きであることがわかった(Saito K and Ono K et al. Mol Cell Biol 2019)。そこでAlas2の酵素機能が部分的に保たれたAlas2ミスセンス点変異(Alas2 R170LおよびAlas2 R170H変異)マウスを作成後、①XLSAモデルマウスの表現型解析、②フェロトーシスおよび全身の鉄代謝制御を標的とした治療によるXLSA改善効果の解析を行うこととした。しかし、作出したAlas2 R170Lマウスは貧血様の表現型のため生後6日までに死亡し、臨床的にさらに重篤な貧血となるAlas2 R170Hマウスは胎生致死を起こすことが分かった。いずれのモデルも生後表現型解析が困難だったため、計画の一部修正が必要となった。
1. XLSAモデルマウスの生後表現型解析が困難であることから、胎児肝臓由来血液細胞および同細胞を移植したレシピエントマウスの骨髄・脾臓の細胞を用いた造血系の解析を進める。2. XLSAモデル細胞の脱核前後を含む成熟ステージ別の発現解析を行う。
物品納品の遅延によって生じたものである。令和5年度請求額と合わせて、物品の納品に必要な経費として使用する予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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