Ecotropic viral integration site 1 (EVI1) は造血幹細胞の維持に重要な転写因子として知られるが、急性骨髄性白血病の中でEVI1高発現はde novo 急性骨髄性白血病の約5~10%程度に認められる。このサブグループはあらゆる治療に抵抗性を示す極めて予後不良の集団であることが知られるが、分子標的治療の進歩にもかかわらず有効な治療法が開発されていない。近年、急性骨髄性白血病細胞の中にも分化の階層性が存在し、その頂点の白血病幹細胞が未分化性や自己複製能を有し、難治病態の形成や再発に関わることが知られるようになった。そこで、本研究ではEVI1が白血病幹細胞の幹細胞性(自己複製能、未分化性)の維持に関わっている機構を明らかにすることを目的とした。EVI1高発現白血病マウスモデルを用いて、RNA-seq解析を用いて白血病幹細胞が濃縮されている分画でそれ以外の分画と比較して有意に発現量が高い遺伝子を抽出し、また、ChIP-seq解析を用いて白血病幹細胞が濃縮されている分画でEVI1のDNA結合領域が制御すると考えられる遺伝子を抽出し、これらの抽出した遺伝子で重複する803遺伝子を白血病幹細胞性維持に関わる遺伝子候補とした。これらの遺伝子に対するguide RNAライブラリーを作製し、CRISPR/Cas9技術を用いてノックアウトライブラリーによるスクリーニングを行い、EVI1高発現白血病モデルマウスにおいて白血病幹細胞の維持に必要な遺伝子の絞り込みを行い、12遺伝子を抽出した。今後、これらの遺伝子のEVI1高発現白血病における白血病幹細胞性維持機構を明らかにし、治療標的となりうるか解析を継続して行う。
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