研究課題/領域番号 |
22K16303
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
仙波 雄一郎 九州大学, 医学研究院, 助教 (90816787)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 急性骨髄性白血病 / CRISPRスクリーニング |
研究実績の概要 |
成人急性骨髄性白血病 (AML)は、近年の新規分子標的治療薬の登場以降も、未だ治療成績が不良であり、新規治療法の開発が喫緊の課題である。特に、癌抑制遺伝子TP53の変異は、既存の治療薬に対する治療抵抗性を示す最も強力な予後不良因子であるが、その治療抵抗性を克服する治療法は未だ確立されていない。申請者らは、TP53変異AMLが治療薬存在下で生存するために依存する経路が存在し、臨床的な治療抵抗性に関与していると考えた。本研究では、将来の薬剤開発を念頭に、複雑な細胞状態の変化をきたすTP53変異AMLが依存している経路を網羅的機能的手法により解明し、実臨床の難治性病態に関連する標的を同定することを目的とする。2023年度に申請者は、CRISPR-Cas9システムによる全ゲノムスクリーニングの結果から、有意に抽出された細胞周期制御やRNAスプライシング, 細胞内輸送、タンパク質分解経路に関連する遺伝子群について機能解析を行った。さらに、ヒト白血病患者の遺伝子変異、発現解析データベースを用いて治療標的となりうる遺伝子を抽出した。細胞内のタンパク質局在に関わる因子に着目し、当初計画に加えて質量分析を用いることで、TP53変異白血病細胞においてタンパク質の細胞内局在に重要な因子が制御するタンパク質群の網羅的な解析が可能であった。また、転写制御に関わる因子の機能解析のため、RNA-seq, ATAC-seqを導入し、白血病細胞における制御遺伝子の同定を行った。さらに、それぞれの候補因子について、dTAGシステムを用いた細胞内タンパク質分解系を導入し、in vitroおよびin vivoで複数候補因子の治療標的としての治療効果を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、CRISPR-Cas9スクリーニング結果からTP53の遺伝子変異状況により細胞増殖に与える影響が異なる遺伝子を複数同定し、概ね順調に進展していると考えている。細胞内のタンパク質局在に関わる因子に着目し、当初計画に加えて質量分析を用いることで、TP53変異白血病細胞においてタンパク質の細胞内局在に重要な因子が制御するタンパク質群の網羅的な解析が可能であった。また、転写制御に関わる因子の機能解析のため、RNA-seq, ATAC-seqを導入し、白血病細胞における制御遺伝子の同定を行った。さらに、それぞれの候補因子について、dTAGシステムを用いた細胞内タンパク質分解系を導入し、in vitroおよびin vivoで複数候補因子の治療標的としての治療効果を評価した。以上のように、実験計画に沿って実験を遂行しており、概ね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、当該年度に同定したTP53依存的に機能が変化する因子について、ヒト白血病細胞における機能的意義の評価を行う。ヒト白血病細胞株で候補遺伝子を誘導的にノックダウンすることで機能解析を行い、異種移植モデルにより、候補因子の白血病治療効果について評価を行う。さらに、ヒト白血病患者検体を用いて遺伝子変異および候補因子の遺伝子発現プロファイルを評価する。ヒト患者検体データベースの解析に加えて、in houseの患者白血病検体を用いてタンパク質およびBulkのRNA-seq解析を行う。そして、同一患者検体内での各細胞分化段階における発現プロファイルを評価するためにsingle cell RNA-seqを導入する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に当初予定していた内容に加え、初期スクリーニング結果からさらに複数候補遺伝子の抽出を行い、機能解析を追加して行った。そして、ヒト白血病患者情報の解析に、公共データベースに登録されている遺伝子発現情報を使用した臨床上有用な因子の絞り込みのステップを追加した。その結果、実際のin-houseの臨床検体を用いた候補因子解析に遅れが生じ、次年度に統合して行うこととしたため、次年度使用額が生じた。次年度は、本年度までに同定した候補因子群について、各種遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病の実臨床検体を用い、タンパク質およびmRNA発現量解析に加え、single cell RNA-seqを導入することで、同一検体内における細胞分化段階毎のより詳細な発現プロファイルを同定する。
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