研究実績の概要 |
クロマチン高次構造の変化は遺伝子発現調節に重要な役割を担っており、白血病の病態との関連が示唆されている。遺伝子異常や染色体異常は白血病の主病因であるが、これらの異常がクロマチン高次構造に与える影響を検証するため、16 番染色体逆位[inv(16)]急性骨髄性白血病(AML)マウスモデルを用いて解析を行った。 米国国立衛生研究所研究室との共同研究により、inv(16)AMLマウス由来の白血病細胞を用いて高深度のクロマチン高次構造解析(Hi-Transposase-mediated analysis of chromatin looping, Hi-TrAC)を行い、inv(16)AMLに特異的なクロマチン高次構造変化を明らかにした。また、本疾患特異的オンコプロテイン(CBFβ-SMMHC)と共役転写因子RUNX1、クロマチンループ形成因子(CTCF, コヒーシン)等のゲノム上局在部位を解析し、CTCF 非依存的なクロマチンループ形成にCBFβ-SMMHCとRUNX1、その他エピジェネティック制御因子が関与していることを見出した。また、CBFβ-SMMHCとRUNX1は本来のRUNX1結合部位とは異なる部位に強く結合していることが認められた。 これらの結果より、inv(16)AML特有の異常転写因子複合体が、転写という機能面のみならず、クロマチン高次構造の変化も引き起こし、白血病化を誘導していると考えられた。この異常転写因子複合体の形成に関わるエピジェネティック制御因子は新たな治療標的となる可能性がある。
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