本研究では、昨年度にヒト検体を用いて単一細胞レベルで同一細胞から遺伝子発現、細胞表面蛋白質発現および細胞内蛋白質発現データを同時計測するシングルセル解析手法を確立し、ヒト末梢血単核球を用いた検証によってその妥当性を確認した。 本年度は、昨年度に確立した独自のシングルセル解析手法を用いて初発急性骨髄性白血病の患者検体を解析した。解析対象としては、健常ドナーから取得された正常コントロール2検体と急性骨髄性白血病6検体を用いた。ヒト末梢血単核球での検討結果と一致して、患者検体からも遺伝子発現および細胞表面蛋白質のデータを高精度に取得することに成功した。また、細胞内蛋白質についても、複数検体において正常コントロール検体と比較してアポトーシス関連蛋白質の発現亢進を検出することに成功した。遺伝子発現および細胞表面蛋白質のデータから細胞種ごとに分類し、各細胞種における細胞内蛋白質の発現を評価した結果、骨髄系細胞だけでなく、周囲の免疫細胞でも細胞内蛋白質の発現が正常コントロール検体と腫瘍検体で差があることが見出された。この細胞内蛋白質発現量の差は細胞内染色法を用いてフローサイトメトリーでも確認を行った。今後、シングルセルデータの解析を進め、細胞内蛋白質発現量の違いに伴ってどういった細胞内機能の違いが生じているか、遺伝子発現データの検討を進めるのに加えて、本研究で見出された腫瘍検体における細胞内蛋白質発現亢進が腫瘍周囲の免疫細胞に対してどういった変化を起こしているか、マウス急性骨髄性白血病モデルを用いて検討していく方針である。
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