研究課題/領域番号 |
22K16329
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
藤本 康介 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (30802805)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / バクテリオファージ / 急性移植片対宿主病 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、46症例の同種移植患者から経時的に集めた糞便検体の16SrRNA解析を行い、30症例においてEnterococcus属細菌の割合が顕著に増加していることを確認した。Enterococcus属細菌の割合が多い糞便検体からEnterococcus選択培地を用いて複数の菌株を単離し、PCR法を用いてEnterococcus faecalisとEnterococcus faeciumの菌株を選別した。得られた菌株の中にバンコマイシン耐性腸球菌は含まれていなかった。得られた菌株のショットガンシークエンスを行ったところ、E. faecalisにおいてバイオフィルム関連遺伝子を多く検出した。また、プロファージ配列を同定し、溶菌酵素配列を抽出した。得られた溶菌酵素配列を元に、溶菌酵素を人工合成し、in vitroでさまざまな腸内細菌に対する溶菌効果を検討した。E. faeciumやE. coliなど他の腸内細菌に対しては溶菌活性を持たず、E. faecalis特異的な溶菌酵素であることを明らかとした。さらに、無菌マウスにE. faecalisまたはE. faeciumを定着させ、in vivoにおいての溶菌活性を検討した。E. faecalisを定着させたシングルノトバイオートマウスでは顕著な溶菌活性を示したが、E. faeciumを定着させたシングルノトバイオートマウスでは溶菌効果を示さなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、メタゲノム解析技術を用いて、移植片対宿主病(GVHD: graft-versus-host disease)のリスクを高めるpathobiontに対する次世代ファージ療法の確立を目指すものである。目的達成のために、1)同種移植患者糞便を用いたE. faecalisの単離、2)E. faecalis特異的な溶菌酵素の探索およびその溶菌活性の解析、3)GVHDモデルマウスを用いた溶菌酵素の効果の評価を検討する。今年度までに、E. faecalis特異的な溶菌酵素の精製およびin vitroまたはin vivoでの活性評価まで進んでいる。以上から、実験計画通り概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、GVHDモデルマウスでの溶菌酵素の効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降も大規模な動物実験を予定しているため、一部を繰り越した。
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