研究課題/領域番号 |
22K16331
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
平野 健一 東海大学, 医学部, 特定研究員 (70535228)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | T細胞 / Notchシグナル / 初期T細胞分化 / 造血前駆細胞 |
研究実績の概要 |
T細胞はリンパ球前駆細胞が胸腺へ移行し、Notchシグナルが誘導されることで分化を開始する。Notchシグナルの重要性については、遺伝子改変マウスの解析によって明らかにされているが、Notchシグナルがどのような分子メカニズムで初期T細胞の発生を制御しているのかは不明な点が多い。特に、最初期の分化段階において、Notch1と同様に高発現しているNotch2からのシグナルについてはほとんど解析されていない。我々は、Cas9ノックインEBF1欠損マウスから、T細胞分化能を長期に保持し、容易に増幅可能なリンパ球前駆細胞株を樹立した。我々は、この細胞にsgRNAを導入することで、Notch1およびNotch2を欠失したリンパ球前駆細胞株を独自に確立し、Notch1およびNotch2依存的に発現変化する遺伝子のトランスクリプトーム解析をした。この解析から、T細胞分化にはNotch1だけでなくNotch2も部分的に関与するが、Notch2はTcf7やHes1などの最初期のT細胞分化に重要な遺伝子を十分に活性化できないため、Notch1に比べT細胞分化誘導能が非常に弱いことが分かった。そこで我々は、Notch1欠失細胞を用いて、Tcf7の発現によってT細胞分化能が回復するかどうかを検証した。その結果、Tcf7を導入しNotchシグナルを誘導すると、T細胞分化が部分的に回復することが分かった。一方で、Tcf7の発現のみの条件ではT細胞分化は誘導されないことが分かった。これらの結果から、NotchシグナルはTcf7とそれ以外の遺伝子の発現を誘導することで初期T細胞分化を制御していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Notch1およびNotch2欠失リンパ球前駆細胞株を用いたトランスクリプトーム解析を行った。この解析によって、初期T細胞分化におけるNotchシグナル依存的に発現誘導される遺伝子の同定をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
Notch1およびNotch2を欠失したリンパ球細胞株とNotchシグナル、Tcf7の発現を組み合わせた条件でT細胞へ分化誘導をし、これらの細胞を用いてトランスクリプトーム解析を行う。得られたデータからNotchシグナル依存的かつTcf7非依存的に発現誘導される遺伝子の同定をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次世代シークエンス解析に必要な試薬の購入が欠品等の理由で遅れたため。 次年度使用額は、購入を予定していた試薬に充てる。
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