研究課題/領域番号 |
22K16346
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
福井 翔一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (80770833)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 関節リウマチ |
研究実績の概要 |
目的: シトルリン化酵素であるペプチジルアルギニンデイミナーゼ4(PAD4)が、関節リウマチにおける炎症、とくに、インターロイキン6(IL-6)をはじめとするサイトカイン産生を惹起する機序を明らかにする。リボソームによるmRNAから蛋白質へのサイトカインの翻訳機構にPAD4が与える影響を評価する。 本年度の進捗: 患者の末梢血を用いた場合のO-プロパルギル-ピューロマイシン(OPP)を用いた蛋白翻訳の評価やサイトカイン産生結果のばらつきの克服や再現性の担保ができなかったことから、関節リウマチの滑膜細胞を用いた検討を引き続き行った。PADI4をsiRNAによりノックダウンした細胞では、コントールと比較してIL-6の産生が増加している結果となり、マウスとヒト、ノックアウトとノックダウン、用いた細胞がマクロファージと滑膜細胞と異なるものの、マウスでのプレリミナリーな結果と相反する結果となり、安定した結果が得られなかった。そのため、ノックダウンではなく、ノックアウトが必要であると考え、CRISPR-Cas9のシステムを用いて、関節リウマチ滑膜細胞でのPADI4ノックアウトを行った。当初は長崎大学病院の患者の手術検体から得られた関節リウマチ滑膜細胞を用いていたが、継代の影響のためか増殖の程度が遅くなっていた。CRISPR-Cas9システムを用いた場合は完成までに10回ほどの継代が必要となり、継代回数を重ねた細胞では、その後の実験の再現性に影響を与えることが危惧された。そのため、新たに市販の関節リウマチ滑膜細胞を用いて実験に使用した。10回の継代を経て、PADI4がノックアウトされていることをPCRで確認し、PADI4ノックアウト関節リウマチ滑膜細胞を作成した。また、コントロール用のガイドRNAも用いて、比較のためのコントールの滑膜細胞を作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスで得られたプレリミナリーデータと相反する結果がノックダウンした細胞を用いて得られたため、CRISPR-Cas9のシステムを用いて、PADI4ノックアウトを行った滑膜細胞を用いて研究へと方針の大きな転換はあったものの進捗はおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
作成したPADI4ノックアウト滑膜細胞を用いて、IL-6の産生やOPPによる蛋白翻訳アッセイを行う予定としている。また、抽出したリボソームからシトルリン化したリボソーム蛋白質の免疫沈降を行い、その同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
仮説と相反する結果が得られたため、患者検体を使用する実験を延期していたが、PADI4ノックアウト滑膜細胞を作成する方針に切り替えたため、次年度使用額が生じた。次年度は、滑膜細胞を用いた検討を行うために、総額としては予定と同額を使用する計画としている。
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