研究課題/領域番号 |
22K16351
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
橋本 哲平 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00815839)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 / cell free DNA / toll-like receptor 9 / NFκB |
研究実績の概要 |
本研究の目的は細胞外DNA(cell free DNA: cfDNA)の好酸球多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)における炎症病態への関与を明らかにすることである。これまでの研究では、顕微鏡的多発血管炎(MPA)や多発血管炎性肉芽腫症(GPA)などのEGPA以外のANCA関連血管炎において、血中cfDNAが上昇しており、疾患活動性と関連していた。またcfDNAはさまざまなDNAセンサーで認識され、炎症病態を誘発することが知られていることを考慮すると、EGPAにおいてもcfDNAは疾患の活動性と関連しており、さらに自己DNAの認識が炎症病態形成に関わる可能性がある。 2023年度は「cfDNAの炎症病態への関与」に焦点をあてた。前年度に活動期のEGPA患者の血中cfDNA濃度が著増していることを報告したが、この血中のcfDNAがin vitroで炎症を惹起するか調べた。DNAセンサーの一つであるToll-like receptor 9(TLR9)を発現したHEK293細胞を培養後、播種し、EGPA患者から抽出したcfDNAで刺激したところ、NFκBの核内移行がみられ、EGPA患者のcfDNAをリガンドとしたTLR9のシグナル伝達が確認された。これは血中と同等の濃度で炎症を惹起し、高濃度になるほど強いシグナル伝達が確認された。 前年度の結果からEGPAの活動期に活性化した好酸球から放出されるcfDNAが長時間血中に残存することが分かっており、この難溶性のDNAがTLR9経路を介して炎症病態へ関与している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、EGPAにおけるcfDNAの好酸球からの放出と炎症病態への関与という課題に対して取り組み、EGPA患者における血中cfDNAが、in vitroにおいてTLR9経路を介して炎症を惹起することを示した。昨年度にはEGPA患者の血中cfDNA濃度が著増していること、活性化した好酸球から放出されるcfDNAが難溶性で長時間血中に残存することを示しており、EGPA患者でEEtosisが多く観察されることから、好酸球から放出されるcfDNAが炎症に関与していることを示唆している。実際に血中cfDNAが好酸球由来かはまだ特定できておらず、引き続き研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
2022、2023年度に得られた結果に基づき、次年度ではEGPAにおける血中cfDNAが好酸球の由来であるかどうか確認する。臓器ごとにDNAメチル化パターンが異なることが報告されており、最近これを用いて血中cfDNAの起源の特定がなされている。好酸球においてはIL-5などの遺伝子で低メチル化状態であるため、これをもとにしたPCRで解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度はおおむね順調に進行しており、わずかに費用が残ったが、2024年度の計画実施とさらなる研究発展のために当該研究費が必要となる。2024年度研究計画にもとづき、EGPAにおけるcfDNAの起源を同定する。当該研究費は、研究に際し必要な分子生物学的試薬などの消耗品に使用する。また研究成果の公表のための学会投稿費や論文投稿料などに使用する。
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