研究実績の概要 |
本研究の目的は、アレルギー性炎症による気道上皮細胞のエピジェネティック変化を介した炎症記憶がその後の気道炎症の強度に影響する。」との仮説のもと、「慢性アレルギー性気道炎症に起因する気道上皮細胞の炎症記憶の分子機構を解析し、気道炎症重症化の抑制戦略の基礎を築くとともに、気道上皮細胞の炎症記憶への介入による新規気道炎症制御法の開発基盤を構築すること」である。研究実施計画に基づき、本年度は、気道炎症における気道炎症細胞の炎症記憶の役割の解明、アレルギー性気道炎症による気道上皮細胞の炎症記憶の誘導機構の解明を主眼として研究を行った。野生型マウスにHDMを経気道的に反復投与し(day0, 7, 8, 9, 10, 11)、慢性アレルギー性気道炎症(HDM慢性気道炎症)を誘導した。コントロールとしてPBS投与群を置く。HDM慢性気道炎症を惹起したマウス、及びPBSを投与したコントロールマウスの肺から気道上皮細胞を単離し、Chromium Single Cell Multiome ATAC + Gene Expression解析(scMultiome解析)に供し、単一細胞レベルにおける遺伝子発現とエピゲノム状態を網羅的に評価した。その結果、アレルギー性気道炎症によってエピジェネティック変化が誘導されれていることを同定した。さらに同定されたオープンクロマチン領域に結合する転写因子の予測解析を行うことで、炎症記憶に関連するシグナル伝達経路および標的分子について抽出を行なっている。
|