関節リウマチ(rheumatoid arthritis; RA)は、遺伝的素因や環境因子を背景に発症する代表的な自己免疫性関節炎である。発症早期から、RAの関節内では多様な免疫細胞(例: T細胞・B細胞・単球)や間葉系細胞が細胞間接着や液性因子を介して相互に活性化し、局所の炎症環境を構成する。本課題は、発症早期(1年以内)、メトトレキサートで効果不十分なRA患者を対象に、関節滑膜のシングルセル情報と前向きに収集する臨床情報の統合的解析を通じて、TNF-α阻害剤に対する治療抵抗性の獲得メカニズムを解明することを目的とした。申請者らは、滑膜の細胞構成の多様性を確認し、特定の滑膜線維芽細胞(synovial fibroblasts; SFs)の亜集団が豊富な患者では、前向きに使用したTNF-α阻害剤に対する治療反応性が不良であることを明らかにした。また、これらは他のSFsの亜集団と比較し、腫瘍細胞の増殖、浸潤や転移に関連する特定の分子やケモカインを高発現した(論文投稿予定)。今後、治療抵抗性に関連するSFsの炎症局所における誘導機序を探索することで、RAの難治性病態の一端が解明されることが期待される。
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