研究課題/領域番号 |
22K16355
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
駒井 俊彦 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (50803938)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | TGF-β / 全身性強皮症 / 線維化 / 全身性エリテマトーデス |
研究実績の概要 |
本研究ではTGF-β3の全身性強皮症(systemic sclerosis, SSc)の病態形成における役割を明らかとするために、Tgfb3fl/flマウスを対照としてTgfb3fl/flCD4-Creマウスの表現型・免疫学的機能の評価を実施としている。2022年度はTgfb3fl/flCD4-Creマウスでは自然発症としてAshcroftスコアでの半定量的評価で有意な間質性肺炎を生じていること、ブレオマイシン誘導性の強皮症モデルを用いた検討にて誘導性の間質性肺炎が顕著に生じ肺組織の遺伝子発現をqRT-PCRで検討するとCol1a2、Serpine1等の線維化関連遺伝子の発現が上昇していることを報告とした。2023年度はTgfb3fl/flCD4-Creマウスの表現型の背景となる免疫学的特徴の検討を実施とした。その結果、Tgfb3fl/flCD4-CreマウスではSScと関わる自己抗体である抗Scl-70抗体は血清学的に検出されなかったが、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus, SLE)と関わる抗dsDNA抗体は低力価ながら検出を認めた。また、Tgfb3fl/fl-CD4-Creマウスから単離したCD4陽性T細胞ではRorgt、IL17Aの遺伝子発現が上昇し、CD4+CCR6+ T細胞、B220+CD93-IgM+CD21+の割合が上昇し、T細胞、B細胞の割合の顕著な変化を認めた。さらに、SLEのマウスモデルであるMRL/lprマウスでは自然発症として間質性肺炎を生じるが、そのマウスにTGF-β3蛋白を発現するpCAGGS-Tgfb3ベクターを投与することにより、その間質性肺炎は改善を認めた。これらの結果はTGF-β3が自己免疫疾患の病態形成に関わることを示唆しており、TGF-β3のヒト疾患における役割の解析を継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TGF-β3fl/fl-CD4-Creマウスの個体確保と繁殖に一定の時間を要し、2024年度にも継続した実験を要することとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はTgfb3fl/fl-CD4-Creマウスの免疫・線維化能の追加評価に加え、実施中のTGF-β3の役割のヒトにおける検討とを合わせて評価することで、TGF-β3の免疫・線維化能におけるマウス、ヒトの異同、ヒト自己免疫疾患における役割を明らかにすることを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
TGF-β3fl/fl-CD4-Creマウスの実験に追加の検討としての時間と予算を要したため、追加の実験に関わる消耗費、成果公表に関わる費用を次年度使用額として申請とした。追加実験の遂行ならびに成果公表による本研究成果の社会還元を計画している。
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