研究実績の概要 |
蚊の吸血に伴いヒトに侵入した熱帯熱マラリア原虫は、肝臓を経て赤血球に寄生し症状を引き起こす。ヒトへの侵入から肝細胞侵入までのスポロゾイト期に マラリア表面に発現するPfCSP抗原は、有望なマラリアワクチン抗原候補と見られている。我々はPfCSPをターゲットとした新規ワクチン(m8Δ2/AAV-Pf(s25-CSP))を開発した。PfCSP抗原はN末端部位、NANP-NVDPくり返し部位、C末端部位で構成される。繰り返し部位はB細胞エピトープとして認識され、C末端部位中に存在するTh2RとTh3Rは、T細胞およびB細胞エピトープとして認識される。先行ワクチンであるRTS,Sのアフリカでの第III相臨床試験の結果から、ワクチン接種者に感染したマラリア原虫は、pfcsp遺伝子がコードするC末端部位のTh2R・Th3Rを含む84アミノ酸配列のうち、22部位に変異を認め、53人から193種類のハプロタイプ多型が報告された。この多型のうち、未変異の3D7の割合は約5%程度しかなく、C末端部位の変異がRTS,Sワクチンの有効性を著しく減弱させている可能性が示唆されている。本研究では、m8Δ2/AAV-Pf(s25-CSP)のPfCSP-C末端変異原虫に対する効果を評価する。マウスを用いた評価系を構築するために、R4年度には実際に報告されている変異をもつPfCSPを組み込んだ遺伝子組み換えマウスマラリアを作製した。この原虫を用いたワクチン評価モデルを構築することにより、より効果的なワクチンを開発するための礎を築くことが期待される。
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