研究課題/領域番号 |
22K16373
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
岩永 直樹 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (40912499)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 組織常在型リンパ球 / Th17 / 肺非結核性抗酸菌症 |
研究実績の概要 |
本邦を含む先進国では肺結核症の罹患率は減少を辿っているが、肺非結核性抗酸菌症の罹患率及び死亡率は上昇の一途である (Emerg Infect Dis. 2016. 22:1116-1117)。肺非結核性抗酸菌症は呼吸器の難治性感染症であり、日本では約80%をMycobacterium avium complex (MAC) 症が占め、標準治療であるマクロライド系抗菌薬を含む多剤併用療法は年単位の長期治療を必要とし、治療終了後の再発症例も多い。リスク因子として閉経後の女性などが特徴的であるが、その免疫学的背景は明らかになっておらず、基礎的検討は極めて少ない。肺非結核性抗酸菌症が属する抗酸菌症に関するこれまでの基礎研究は、肺結核症に関する検討が多い。抗酸菌は細胞内寄生菌であるので、Type1免疫が感染防御に重要であるとされてきたが、近年、type17免疫反応の重要性についての報告が増えてきている。2015年にType17免疫反応の活性化に必要な転写因子であるRORCのmutationが、ヒトでMycobacteriumに易感染性を引き起こすことが報告され (Science. 2015; 349(6248): 606-613)、感染初期にILC3が産生するIL-17が肺結核に抑制的に働くことが報告された (Nature. 2019; 570(7762): 528-532)。更に特筆すべきは、通常経皮接種するBCGを肺局所に投与し、肺組織常在型Th17 cellsを誘導することで、強力な予防効果を示す報告が相次いでいることである (Mucosal Immunol. 2019; 12(2): 555-564, Cell Rep Med. 2021; 2(1): 100187)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
80ugのM.aviumの死菌の経皮投与、経気管投与し、1週間後にブースト投与し2週間後に、1.0x10^5 CFUのM.aviumを気管内投与で感染させた。感染2週間、4週間、12週間後に肺内生菌数をカウントしたところ、ナイーブマウス及び死菌ワクチンの経皮投与群と比較して、死菌ワクチンの経気管投与群では、経時的な生菌数の減少傾向を認め、肺組織常在型リンパ球を示唆するCD3+CD4+CD69+ cellsが特異的な増多傾向が示唆された。同時に肺内マクロファージの増加とTnfα-mRNAの強い発現を認め、マクロファージの活性化が示唆され、死菌ワクチンの気管内投与の予防効果の機序の一つである可能性が髙い。
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今後の研究の推進方策 |
組織常在型リンパ球の経時的推移を確認すると共に、各タイムポイントでRNA sequencingを行うことで、経時的減衰の原因遺伝子の同定を試みる。Type17サイトカインの一つであるIL-22はマクロファージの活性化を促進する作用があるため、死菌ワクチンの経気管投与群でのIL-22の発現上昇を確認すると共に、IL-22KO miceやIL-22RA KO miceで予防効果が消失するか確認する。更に、マクロファージの活性にNOが重要であることが報告されており、トリプルNOノックアウトマウスを用いた検討も予定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス使用料が想定よりかからなかったことが、次年度使用額が生じた一因である。 次年度はRNA sequencingなどの検討に高額な必要経費が必要になるため、使用する予定である。
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