研究課題
mRNAワクチンは新型コロナウイルスに対する予防に適用されるなど、新たなワクチンモダリティとして注目されている。mRNAワクチンは迅速に作製可能であり、そのコード領域を改変することで様々な感染症や疾患に対応できる可能性を有していることから、特に今後出現する可能性のある新興・再興感染症に対して有用であると考えられる。一方、mRNAワクチンは、その副反応の発現頻度が高いこと、海外依存度が高く本邦における供給量が安定していないことが問題として挙げられている。その上で、国内でmRNAワクチン開発を目指すためには、出来る限り少ない原材料を用いて、かつ投与量を少しでも減らすことができるように、いかに細胞内でのmRNA発現効率を高めることができるかが課題である。そこで本研究では、mRNAワクチンに最適な非翻訳領域(UTR)をデザインした上で、mRNA鎖長の異なる様々な抗原を安定的に発現させる方法の確立を目指す。実験動物でもそのmRNAワクチンの安全性、免疫原性を評価することで、mRNA発現効率化によるmRNAワクチンデザインの最適化を行い、より有効で安全なワクチン開発基盤の構築を目指している。これまでに、Ribosome profilingのデータベースに登録されているものの中から、ヒト骨格筋細胞およびHeLa細胞を用いたデータを使用し、すべての遺伝子の翻訳効率をそれぞれ算出した。その結果、骨格筋細胞で特異的に翻訳効率の高い遺伝子を同定した。得られた遺伝子の非翻訳領域を搭載するLuciferase mRNAを合成し、293A細胞およびC2C12細胞に導入後、Luciferaseの発光量を測定した結果、高い発現を示すUTRを複数種同定した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、必要とされる実験技法であるin vitro転写によるmRNA合成およびLNPへの封入の実験系を確立した。また、データベースから得られた遺伝子のUTRを搭載するmRNAを合成し、培養細胞での一次スクリーニングを達成するに至り、計画通り進展している。
今後は、マウス及びヒト由来のさまざまな抗原提示細胞 (KG-1細胞, DC2.4細胞など)や筋肉細胞を用いて、293A細胞およびC2C12細胞で同定した翻訳効率の高いUTRを搭載したmRNAの翻訳動態を、Luciferase assayにより検証する。またin vivoでの翻訳効率を測定するためのマウスを用いた生体イメージング手法を確立する。
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Frontiers in Immunology
巻: 13 ページ: 1081047-1081047
10.3389/fimmu.2022.1081047