昨年度、DAP12欠損が肥満に伴う脂肪組織へのマクロファージ浸潤に重要な役割を果たすことを見出した。この分子メカニズムとして、本年度はDAP12欠損がマクロファージの遊走能に及ぼす影響をin vitroとin vivoにおいて検討した。 1)Boyden chamber法を用いてマクロファージの遊走能を検討したところ、DAP12ノックダウンによりmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)に対する走化性が著明に抑制されることを見出した。 2)野生型マウスとDAP12欠損マウスの骨髄細胞を蛍光色素(PKH26とPKH67)でそれぞれ標識した後に混合し、肥満マウスへ眼窩投与した。脂肪組織へ浸潤した細胞をフローサイトメトリーで解析し、PKH26陽性細胞(野生型マウス由来)とPKH67陽性細胞(DAP12欠損マウス由来)の数を比較した。これにより、同一個体中で、野生型とDAP12欠損マクロファージの浸潤能を比較することができ、結果として脂肪組織に浸潤するマクロファージ数はDAP12欠損で顕著に減少した。 また昨年度に、DAP12が慢性炎症に与える影響は脂肪組織と肝臓で異なることを新たな知見として得た。脂肪組織と肝臓における炎症慢性化の起点として既に報告しているcrown-like structure(CLS)と称される特徴的な組織像は、死細胞(脂肪細胞、肝細胞)の周囲にマクロファージが集積し、内部の死細胞を貪食・処理する過程であり、脂肪組織では主に骨髄由来の浸潤マクロファージがCLSを形成するが、肝臓では主に組織常在性マクロファージがCLSを形成する。DAP12欠損がマクロファージの死細胞貪食能に及ぼす影響をin vitroにおいて検討し、DAP12欠損により貪食能が抑制されることを見出した。
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