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2022 年度 実施状況報告書

ヨード輸送体ペンドリンは甲状腺機能亢進症の治療標的となるか

研究課題

研究課題/領域番号 22K16394
研究機関京都大学

研究代表者

山内 一郎  京都大学, 医学研究科, 助教 (20844715)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード甲状腺機能亢進症 / ペンドリン / トランスクリプトーム / ヨード / TSH / バセドウ病
研究実績の概要

バセドウ病に代表される甲状腺機能亢進症は頻度の高い疾患であるが、治療は抗甲状腺薬に代表される薬物療法を中心として数十年にわたり大きな変化がない。さらにはこの第一選択となっている抗甲状腺薬ですら、無顆粒球症などの重篤な副作用や治療抵抗性といった多くの問題を抱えている。
我々は新規治療開発を目指し、TSH過剰発現による甲状腺機能亢進症モデルマウスを独自に開発し、研究基盤の構築を行ってきた。先行研究において、甲状腺機能亢進症モデルマウスの甲状腺を回収しトランスクリプトーム解析を行ったところ、甲状腺濾胞内にヨードを輸送するペンドリンの特異的発現亢進が見出された。本研究課題では、甲状腺機能亢進症の病態におけるペンドリンの意義を解明し、ペンドリン阻害に基づく同症の治療が可能か検証することを目的としている。
上記の仮説をペンドリンノックアウトマウス(以下KOマウス)に対するTSH過剰発現実験を行い検証する。つまり、遺伝子ノックアウトによりペンドリン蛋白の発現量が増加し得ない生体環境においては、TSH過剰発現により惹起される甲状腺機能亢進症が減弱するという作業仮説を立てた。
現在までの進捗として、KOマウスを入手、繁殖し、野生型、ヘテロKO、ホモKOのいずれにもTSH過剰発現処置を行った。しかし、我々の他のマウスに対する経験よりもTSH過剰発現の程度が弱く、バックグラウンドの違いによる可能性を疑った。その後C57BL/6Nバックグラウンドへとバッククロスを完了し、改めてTSH過剰発現処置を実施した。現在、血清、甲状腺を回収し、甲状腺機能測定、遺伝子発現評価、組織学的解析を進めている。
以上のように、ヨード輸送を中心とした甲状腺生理学を発展させるだけでなく、甲状腺機能亢進症の新規治療創出をも目指し、研究を推進している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

ペンドリンノックアウトマウスに対するTSH過剰発現実験を2023年度までにかけて完了する計画であったが、2022年度末において既に投与実験を終えており、回収したサンプルの解析を進めている。すなわち、当初に設定したタイムラインよりも早く完了する目途が立っている。

今後の研究の推進方策

ペンドリンノックアウトマウスに対するTSH過剰発現実験において、甲状腺機能亢進の誘導が減弱する、すなわちペンドリンが治療標的となる可能性が示されれば、抗甲状腺薬や無機ヨードなど既存の治療薬の併用実験、ペンドリン阻害化合物の投与実験など、治療応用に向けた検証を進める予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初計画より進展があり、予備実験で野生型マウスとノックアウトマウス間でフェノタイプの差を観察でき、既に方向性を固めることができた。この成果を踏まえて令和5年度以降に予定しているマウスの解析を前倒しするために次年度使用額が生じた。
使用計画としては 野生型、ヘテロノックアウト、ホモノックアウトのいずれのマウスも
用い、ペンドリンの発現量に依存したTSH過剰発現処置による甲状腺機能や濾胞形態の変化を観察する。甲状腺ホルモン合成系の遺伝子群について発現量の変化を定量PCRによって評価し、ペンドリンについてはウエスタンブロット、免疫組織化学による蛋白レベルの変化も確認する。また、既存薬剤との併用における治療効果の検討も行う計画としている。臨床で最も処方される抗甲状腺薬のチアマゾールの作用機序はTPO活性阻害が主であると考えられ、近年使用例が増えているヨウ化カリウムは細胞内へのヨード輸送を阻害する。ペンドリン阻害に基づく甲状腺機能亢進症治療という戦略の臨床的な位置付けを明確にするため、TSH過剰発現下に野生型マウス・ペンドリンノックアウトマウスへチアマゾール、ヨウ化カリウムを投与する。すなわち、異なる作用点を同時に阻害することで、惹起される甲状腺機能亢進症のさらなる抑制が得られるか検証する。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] High-throughput Screening in Combination With a Cohort Study for Iodothyronine Deiodinases2022

    • 著者名/発表者名
      Yamauchi Ichiro、Sakane Yoriko、Okuno Yukiko、Sugawa Taku、Hakata Takuro、Fujita Haruka、Okamoto Kentaro、Taura Daisuke、Yamashita Takafumi、Hirota Keisho、Ueda Yohei、Fujii Toshihito、Yasoda Akihiro、Inagaki Nobuya
    • 雑誌名

      Endocrinology

      巻: 163 ページ: bqac090

    • DOI

      10.1210/endocr/bqac090

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Identification by Liquid Chromatography?Tandem Mass Spectrometry and Liquid Chromatography?Quadrupole Time-of-Flight Mass Spectrometry of the Contributor to the Thyroid Hormone Receptor Agonist Activity in Effluents from Sewage Treatment Plants2022

    • 著者名/発表者名
      Omagari Ryo、Yagishita Mayuko、Shiraishi Fujio、Nakayama Shoji F.、Terasaki Masanori、Tanigawa Tetsuya、Yamauchi Ichiro、Kubo Takuya、Nakajima Daisuke
    • 雑誌名

      Environmental Science & Technology

      巻: 56 ページ: 13709-13718

    • DOI

      10.1021/acs.est.2c02648

  • [学会発表] Effects of peripheral iodothyronine deiodinases on thyroid hormone economy: Insights from the overexpressing mice.2022

    • 著者名/発表者名
      Yamauchi I, Sakane Y, Yamashita T, Hakata T, Sugawa T, Fujita H, Okamoto K, Taura D, Hirota K, Ueda Y, Fujii T, Yasoda A, Inagaki N
    • 学会等名
      104th ENDO Annual Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] 脱ヨード酵素と甲状腺機能 20222022

    • 著者名/発表者名
      山内 一郎
    • 学会等名
      第65回日本甲状腺学会学術集会
    • 招待講演
  • [学会発表] 新規治療開発に向けたTSH受容体シグナルの分子機構解明2022

    • 著者名/発表者名
      山内 一郎
    • 学会等名
      第65回日本甲状腺学会学術集会
  • [学会発表] 新規過剰発現マウスを用いた脱ヨード酵素による甲状腺ホルモン作用調節機構の解析2022

    • 著者名/発表者名
      山内 一郎、坂根 依利子、山下 貴史、伯田 琢郎、須川 琢、藤田 晴香、岡本 健太郎、田浦 大輔、植田 洋平、藤井 寿人、八十田 明宏、稲垣 暢也
    • 学会等名
      第95回日本内分泌学会学術総会

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公開日: 2023-12-25  

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