研究課題/領域番号 |
22K16403
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
岩田 尚子 藤田医科大学, 医学部, 客員助教 (40925567)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 低ナトリウム血症 |
研究実績の概要 |
低ナトリウム(Na)血症は、電解質異常症の中で最も頻度が高く日常診療でよく遭遇する疾患である。従来、低Na血症の中でも慢性の低Na血症は無症状と考えられてきた。しかし近年、疫学的研究において軽度な慢性の低Na血症が、認知注意機能障害、転倒・骨折、不安、抑うつなどの神経精神学的障害との関連が報告され、Quality of lifeの低下及び生命予後を悪化させることが知られてきた。申請者のグループは低Na血症を引き起こす代表的疾患であるSIADH動物モデルを開発し、慢性低Na血症が歩行障害、記憶障害を引き起こし、その機序としてグルタミン酸代謝異常が関与することを報告した。その研究の際に、慢性低Na動物が不安様行動を呈することを見出していた。疫学的研究で報告されている低Na血症と不安、抑うつについての基礎的研究の報告はなく、因果関係、機序は不明である。本研究では、動物モデルを用いた慢性低Na血症による不安様及びうつ様行動の解析、メカニズムの解明、治療法の開発を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
8週齢の雄C57BL/6マウスに液体食投与とデスモプレシン酢酸塩水和物(dDAVP)の持続皮下注を行い、慢性低Na血症モデルマウスを作製した。これらのマウスを用いて行動解析を行い、ラットモデルと同様に慢性低Na血症により、不安様行動が増強することを確認した。また、慢性低Na血症モデルマウスの脳各部位でモノアミン含有量の測定を行い、扁桃体で各種モノアミンの含有量が有意に変化していることを明らかにした。さらに、扁桃体でERKのリン酸化が低下していることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
慢性低Na血症モデルマウスにおいて、c-fos免疫染色を行い、活性化が変化している脳部位の評価を行う。また、Caイメージングでも神経活動が変化している部位について評価を行う。活性化が変化した部位については、RNA-Seqを行い、神経活動が変化しているメカニズムの評価を行う。視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)は、抑うつ、不安と関連することが知られており、低Na血症のストレスでCRHニューロンが活性化されている可能性があり、CRHニューロンの免疫染色やコルチコステロンの測定を行う。またCRH受容体の発現異常が不安様行動と関連することが知られており、遺伝子発現、蛋白発現などを評価する。またオキシトシンは抗不安作用が知られており、低Na血症での発現低下が不安様行動に関与している可能性も考えられ解析する。さらに、動物モデルを用い、現在抗不安薬、抗うつ薬障害治療で用いられているベンゾジアゼピン系、選択的セロトニン取り込み阻害薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、ケタミンなどの有効性を検討する。また上述の不安様行動、うつ様行動のメカニズム解析に基づいた新規薬物治療法の開発を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の蔓延等に伴い、当初の計画と、実験の実施時期にずれが生じたこと、また購入予定であった試薬や薬品等で一部、余剰があったものを使用でき、購入不要になったことなどで次年度使用額が生じた。 今後、慢性低Na血症モデルマウスにおいて、c-fos免疫染色を行い、活性化が変化している脳部位の評価を行う。また、Caイメージングでも評価を行い、活性化 が変化した部位については、RNA-seqを行う予定である。 さらに、CRHニューロンの免疫染色やコルチコステロンの測定も行い、遺伝子発現、蛋白発現なども評価する。 また、動物モデルを用い、ベンゾジアゼピン系、選択的セロトニン取り込み阻害薬、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、ケタミンなどの有効性を検討する。
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