研究課題/領域番号 |
22K16405
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
浅利 ゆう子 弘前大学, 医学部附属病院, 助教 (40876942)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | クッシング症候群 / アルプラゾラム / 偽性クッシング症候群 / 負荷試験 |
研究実績の概要 |
「偽性クッシング症候群」は、アルコール多飲やうつ、不眠症、高度肥満などを背景に、視床下部のCRH分泌神経が活性化され、その結果ACTHとコルチゾールが高値を示す病態である。手術を要する「腫瘍性クッシング症候群」とは治療方法が根本的に異なる。 本研究の目的は両者の鑑別に抗不安薬アルプラゾラムが有用かを検証することである。アルプラゾラムの適応外使用は、2022年2月22日に弘前大学臨床研究審査委員会にて正式に承認された。具体的には、①アルプラゾラム負荷試験、②アルプラゾラム-デキサメサゾン負荷試験、③デキサメサゾン-CRH負荷試験、の施行が承認された。 委員会で承認された臨床試験実施計画書にのっとり、同年4月より研究を開始した。 開始後、計6名の患者に上記検査を施行した。「間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き」に基づき、6名中5名は偽性クッシング症候群と診断、1名は診断保留中である。腫瘍性のクッシング症候群と診断した患者はいなかった。 これら患者のうち、検査①は6名全員に行われ、4名の深夜コルチゾール値が5μg/dl(腫瘍性クッシング症候群の診断基準)以下に低下した。検査②は3名に施行し、1名がコルチゾール 値3μg/dl以下(腫瘍性クッシング病の診断基準)となった。以上より、当初仮定したとおり偽性クッシング症候群では、アルプラゾラムがACTH、コルチゾール分泌を抑制させることが示唆された。本研究中、最も鑑別能が高いと思われる③の検査は、6名中2名に施行した。2名ともコルチゾール値が抑制され、偽性クッシング症候群が示唆された。2名中1名は①で深夜コルチゾール <5μg/dlに改善、②で<3μg/dl以下だった。もう1名は①でF <5μg/dlに低下せず、②でF <3μg/dlに低下せず、③と結果が合致しなかった。 アルプラゾラムの有害事象は現時点では確認されていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年に本研究に使用する薬品CRHの供給が一時的に途絶えた。また、Covid‐19感染症の蔓延による入院制限があり、入院で施行する必要のある本研究の対象患者は限定された。 以上より、予定より研究はやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
現時点での課題は、腫瘍性のACTH依存性クッシング症候群患者に検査を施行できていない点である。現在、CRHの供給が再開しており、薬品の不足は解消された。また、2023年5月にはCovid19感染症が5類感染症に変更される見込みであり、入院制限は緩和されるものと考えられる。以上より、本年は予定どおりの研究遂行ができると見込まれる。症例をさらに蓄積し、腫瘍性クッシング症候群にも検査を実施し、鑑別の有用性を検証したい。
また2023年6月の日本内分泌学会総会で本研究の経過報告を行う予定であり、他の専門家らの意見を踏まえ、研究のブラッシュアップを行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がWebで開催され、出張費が不要だった。また、メーカー都合によりCRHの供給が途絶え、薬品の購入を行わなかった。 令和5年度は必要となる薬品を購入し、研究を進める予定である。
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