研究課題/領域番号 |
22K16406
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山崎 有人 東北大学, 医学系研究科, 講師 (70833367)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 副腎 / ステロイド / アルドステロン / 高血圧 / コレステロール / 病理 |
研究実績の概要 |
今年度は原発性アルドステロン症(PA)、クッシング症候群(CS)約40症例ずつを対象として、コレステロール受容体(LDL-R, SR-B1)、及び、de novo 合成経路に関する酵素(DHCR24)、コレステロールエステルから遊離コレステロール変換する酵素(HSL, ACAT1/2)の免疫組織化学を実施し、正常副腎および、PA, CS の手術検体における局在を定量的に解析した。また、PA, CS の凍結検体を用いて GC-MS 解析を実施し、組織中のコレステロール、コレステロールエステル等の濃度を測定した。更に PA, CS においてステロイド過剰産生に関与する体細胞遺伝子変異の有無を解析して、phenotype-genotype の関係性についても検討した。 その結果、PA 症例では腫瘍組織において SR-B1 を介するコレステロールエステルの selective uptake や de novo 経路が亢進しており、特に KCNJ5 変異陽性の腺腫では淡明な細胞質を有する細胞が多く観察され、これらではコレステロールエステルを脂肪滴として豊富に有している事が示された。これは PA を呈する自律性アルドステロン合成細胞特異的な表現型と考えられ、今後、治療標的因子としての可能性も十分に期待される結果となった。本検討で得られた研究成果は Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology 誌に報告、掲載されている。一方、CS 症例では PRKACA 変異を有する細胞はやや緻密細胞が優位に観察され、コルチゾール産生能が高い傾向にあり、コレステロールエステルの貯蔵に乏しく、starved な細胞である事が判明した。本成果も International Journal of Molecular Science 誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画立案当初は PA, CS 症例における免疫組織化学的解析、及び、質量解析を同時進行する形で約1年半から2年の期間を予定していたが、既に先行研究の結果より、免疫染色の条件決めに費やす時間が削減でき、また、質量解析、及び、免疫染色評価においても方法が確立していたため、それぞれ40例ずつ程度を解析する事が可能であった。 一方で、ステロイド過剰産生細胞特異的なコレステロール取り込み、生合成、代謝機構の表現型は今年度解析した因子のみでは不十分と考えられるため、今後、因子を追加して検討する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度実施した PA, CS 症例における免疫組織化学的解析、及び、質量解析の結果から追加で検討すべきコレステロール取り込み、生合成、代謝機構に関する因子が判明したため、今年度後期よりその検討を実施している。特に、PA 症例の質量解析において測定したコレステロール関連分子の中に血中アルドステロン濃度と相関するものが少数例でのパイロット研究で得られたため、本分子とアルドステロン生合成との関連性について今後検討を要する。 また、場合によっては悪性腫瘍との比較も行う。 これらに加え、研究計画の通り、今年度得られたデータと臨床情報、及び、病理組織学的細胞形態像との関連性についても検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度分は実施報告書に記載の通り、先行研究により免疫組織化学、質量解析の検討方法が決まっていたため、物品費は最小額に留められた。また、学会参加はWEB参加も多く、旅費として使用する事は無かった。一方で、今年度の研究結果により追加因子に関する免疫組織化学的検討の必要性が出てきたため、これらを次年度予算に回す。
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