研究課題/領域番号 |
22K16409
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中野 雄二郎 金沢大学, 附属病院, 助教 (10883895)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 原発性アルドステロン症 / 肥満 / マイクロRNA |
研究実績の概要 |
原発性アルドステロン症(PA)は高血圧全体の約10%を占め、降圧薬で血圧を改善させていても心血管疾患の発症リスクが高いとされる。その内、特発性アルドステロン症(IHA)は生涯のアルドステロン拮抗薬の内服が必要である。この特発性アルドステロン症の患者には肥満が多いことが指摘されていたが詳細は十分わかっていない。本研究では脂肪組織がマイクロRNAを分泌することで特発性アルドステロン症を引き起こすという仮説を検証している。 【1.ヒト肥満IHAにおける特徴的な血中miRの網羅的解析】肥満かつIHA症例の血中エクソソーム内マイクロRNAを非肥満のIHA症例または肥満の非PA症例との比較でwhole-miRNA sequenceを行い複数の候補マイクロRNAが得られた。それらのなかで、実際にRT-qPCRにて血中エクソソーム内発現を評価したところ複数のマイクロRNAが有意に高発現または低発現であった。 【2.ヒト副腎皮質細胞株を用いた候補miRの機能解析】前述実験で得られている候補マイクロRNAのmimicを個別に副腎皮質細胞株H295Rにtransfectionした。一部のマイクロRNAはH295RにおいてCYP11B2発現および培養上清中アルドステロン濃度を上昇させることが分かった。 【3.肥満IHA患者由来の血中エクソソームと副腎の親和性の解析】患者血清より抽出したエクソソームを副腎皮質細胞株H295Rへ添加したところ、CYP11B2発現および培養上清中のアルドステロンの上昇が確認できた。 【4.肥満症患者の脂肪細胞における候補miR発現の解析】研究開始時期より肥満症外科手術を実施した患者の脂肪組織をサンプリングしておりこれまで9例の脂肪組織をサンプリングした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね研究計画通りである。
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今後の研究の推進方策 |
【1.ヒト肥満IHAにおける特徴的な血中miRの網羅的解析】症例数を増やして発現差を確認する。 【2.ヒト副腎皮質細胞株を用いた候補miRの機能解析】マイクロRNAがCYP11B2発現を調整するシステムを解析する。 【3.肥満IHA患者由来の血中エクソソームと副腎の親和性の解析】エクソソームを作用させたH295R内のマイクロRNA量の変化および、比較対象の細胞への作用を確認する。 【4.肥満症患者の脂肪細胞における候補miR発現の解析】患者毎の脂肪組織内のマイクロRNAおよびその親遺伝子と血中エクソソーム内マイクロRNA、アルドステロン産生能との関連を評価する。また、通院中のIHA患者から横断的に血液を回収し、体重変化を連続変数として捉えることで、血中miR変化との関連を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】脂肪組織の解析が4月以降にずれ込んだため。 【計画】脂肪組織からのRNA抽のためにmiRNeasy mini kit(QIAGEN)を用い、miRを含むtotal RNAを抽出する。遺伝子発現解析のためにはReverTra Ace qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(TOYOBO)を用いる。miR発現の評価にはTaqMan Advanced miRNA cDNA Synthesis Kit(Thermo Fisher)を用いる。qPCRにはTaqman Fast advanced master mix(Thermo fisher)およびTaqman Powerup SYBG master mix(Thermo Fisher)を用いて、遺伝子およびmiR発現を定量する。得られた結果と血中発現との関連を評価する。
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