脂肪組織量に関わるトランスクリプトームの総合的な解析から可能性の高い因子として、HSP47を同定した。HSP47はERに局在するコラーゲンタンパクに特異的なシャペロンタンパクとして知られており、コラーゲンのフォールディングや分泌に重要な役割を果たす。HSP47は脂肪組織に高発現し、脂肪が蓄積する環境の摂食や過食、肥満では発現が増加し、逆に脂肪組織量が低下する絶食や運動、肥満外科治療、Cachexiaでは発現が低下した。遺伝的な変異によるHSP47遺伝子発現の増加はヒトの脂肪組織量の増加と相関しており、逆にマウスのHSP47阻害や欠損モデルでは脂肪組織が低下した。欠損モデルの脂肪組織では脂肪蓄積のマスターレギュレーターであるPPARgのタンパク発現が低下しており、遺伝子発現には影響ないことから、PPARgタンパク発現制御の可能性が示唆された。3T3-L1脂肪細胞を用いた実験でも同様に、HSP47のノックダウン及び阻害によりPPARgの遺伝子発現には影響なく、タンパク発現が低下した。そのメカニズムとして、HSP47はシステミックな栄養状態に応じて、その発現を調節し、脂肪細胞外のコラーゲンマトリックスのフォールディングや分泌を制御し、細胞膜インテグリンとの結合、その下流の細胞内FAKシグナルを誘導し、PPARgを安定化させることで、脂肪組織量を規定していることが分かりつつある。
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