研究課題
(1)1型糖尿病と2型糖尿病共通の疾患感受性遺伝子の検討:9番染色体上のGLIS3遺伝子は、欧米における全ゲノム関連解析の結果、1型糖尿病と2型糖尿病のいずれに対しても疾患感受性遺伝子座として同定されていることから、膵β細胞の脆弱性に関わる可能性がある。そこで欧米において関連を認めたGLIS3 rs7020673について関連解析をおこなったところ、1型糖尿病(Gアリル頻度:患者51.3% vs. 健常対照者49.5%, p=0.55)、2型糖尿病(患者44.4% vs. 健常対照者49.5%, p=0.09)ともに有意差に至らず、本邦においてGLIS3遺伝子が両病型共通の疾患感受性遺伝子と言える結果は得られなかった。(2)残存インスリン分泌能と遺伝因子・臨床指標との関連:同意を取得した164例(急性発症102例、緩徐進行62例)において、急性発症・緩徐進行の両群別に、空腹時血清Cぺプチドを目的変数、HLA疾患感受性・抵抗性ハプロタイプの遺伝子型(DR4/DR4、DR9/DR9、DR4/DR8、DR4/DR9、A24/A24 or A24/X、DR2/DR2 or DR2/X)保有の有無を説明変数とし重回帰分析を行うと、急性発症において、DR4/DR9で有意な負の相関(急性:偏回帰係数-0.3048、P=0.0121)を認めた。また、臨床指標(罹病期間、発症年齢、BMI、AITD合併、GAD抗体陽性、IA-2抗体陽性、膵頭関連自己抗体複数陽性、CSII使用)を説明変数とし、重回帰分析を行うと、両群で、罹病期間で有意な負の相関(急性発症:偏回帰係数-0.025、P<0.001、緩徐進行:偏回帰係数0.0187、P=0.0168)を認めた。以上より、罹病期間は長いこと、DR4/DR9を保有することが、残存インスリン分泌能低値に寄与する独立した規定因子であることが明らかとなった。
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