ウイルスに感染した膵β細胞は、インスリン分泌低下やグルカゴン発現上昇などを特徴とする脱分化(可塑性)を示すことが報告された。しかし、これらの研究成果は試験管内実験による結果であるため、生体のウイルス感染と膵β細胞の脱分化の関連は不明である。そこで本研究は、独自に開発した遺伝子改変マウスを用いて、生体のウイルス感染と膵β細胞脱分化の関連とそのメカニズムを明らにし、新規糖尿病治療戦略の創出へ繋げることを目的とする。 本年度は、使用する遺伝子改変マウスの導入と感染実験を実施した。遺伝子改変マウスの樹立が予定よりも早く完了し、前倒しして解析を実施した。また、樹立した遺伝子改変マウスと他系統の遺伝子改変マウスの交配を実施した。これらのマウスを用いた感染実験によって、ウイルスの血清型がグルカゴン陽性細胞の増加と関連する可能性が示唆された。また、グルカゴン陽性細胞の増加には雌雄差が認められることが明らかになった。本年度得られた結果から、生体のウイルス感染が膵β細胞の機能低下や脱分化と関連することが示唆された。
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