研究実績の概要 |
本研究では、RND2遺伝子をマウスにおいて発現抑制することで、①肝臓のインスリン感受性、糖・脂質代謝に変化を認めるか、それらが全身にどの程度の影響を及ぼすのかを評価する。さらには、②肝臓の大きさや形態がどのように変わるのか、生化学的手法と病理学的な手法を組み合わせて、脂肪蓄積量、実質部分、間質部分に分けて評価し、実質の変化が肝細胞の数かサイズ、いずれの変化によるものなのかを検討する。 2022年度はRND2KOマウスを用いて糖代謝ならびに肝臓の中性脂肪蓄積量の評価を行った。通常食で飼育した13週齢の雄性RND2KOマウスおよび野生型(WT)マウスを用いた腹腔内糖負荷試験の結果、RND2KOはWTと比較して血糖値の60分値(RND2KO vs WT, n=17 vs 15, P<0.05)ならびにArea Under the Curve(AUC)が有意に低値であった。肝臓重量はRND2KOで大きく、肝臓内中性脂肪含有量に有意差を認めなかった。dbdbマウスに対しsiRNAを用いて肝臓特異的にRND2の発現を抑制した群(RND2 siRNA, n=9)とNegative siRNAを投与した群(Negative siRNA, n=10)で腹腔内糖負荷試験を実施した結果、siRNA投与から7日後に実施した腹腔内糖負荷試験では2群間で血糖値ならびにAUCに明らかな差は認めず、肝臓重量に関しても有意差はなかった。 今回我々が新たに作成したRND2KOマウスの検討の結果からRNDKOマウスではWTと比較して糖代謝が改善していることが明らかとなった。一方で、肝脂肪の有意な減少は認めず、siRNAを用いた急性の肝臓特異的なRND2の発現抑制でも糖代謝ならびに肝重量に有意差は認めず、長期的な全身でのRND2の抑制が脂質代謝を介さずに糖代謝に好影響を及ぼす可能性が示唆された。
|