研究実績の概要 |
我々は、先ず独自に同定したマウス肝細胞のマスター転写因子群(Hnf4a, Foxa3, Cebpa, Cebpd, Hnf6, Onecut2)の機能解析を行った。6個のマスター転写因子群に対し、1因子を抜いて作製したiHep(6F-1_iHep)および、2個のマスター転写因子(Hnf4a, Foxa3)に残りの4因子のうち一つを加えて作製したiHep(2F+1_iHep)に対しRNA-seqを行った。結果として、6個の転写因子群のうち、Hnf4aおよびFoxa3が分化転換の主要な因子であることがあらためて示された。また、WGCNA解析を実施し、主要な肝機能の関連遺伝子を含むモジュールのハブとなる遺伝子を解析した結果、Hnf4aおよびFoxa3の下流でハブとなるFabp1などの遺伝子群を同定し、それらがさらに下流の遺伝子群の発現に関与するという階層性が明らかとなった。次に上記6因子と既報の転写因子(HNF1A, PROX1, ATF5)を用いて、ヒト細胞におけるiHep樹立に最適な転写因子の組み合わせを探索した。ヒト皮膚線維芽細胞に様々な組み合わせの転写因子群を、レンチウイルスを用いて強制発現させ、出現するiHepのアルブミン陽性細胞率で評価した。その結果、HNF4A, FOXA3, CEBPAの組み合わせがアルブミン陽性細胞率最大化の最小単位であることが明らかになった。一方で、これらの転写因子をヒトiPS細胞に強制発現させたところ、アルブミン陽性細胞は出現するものの、その分化転換効率は極めて低かった。ヒトiPS細胞からiHepへのdirect conversion(forward programming)の報告は存在せず、現在その原因と克服法を探索中である。
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