本研究は、gBRCA1/2遺伝子変異トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の治療効果予測のため腫瘍微小環境における免疫応答機序を解明することを目的とする。TNBCにおいて、近年他の複数の悪性腫瘍で報告されているが乳がんでは報告のないB細胞や三次リンパ組織様構造の抗腫瘍免疫への関与について追求する。NCBI Gene Expression Omnibusから遺伝子発現データと予後情報を有するdatasetを抽出して構築されたPublic databaseを用いて以下の解析を行った。複数の他悪性腫瘍においてICIの治療効果と相関することが報告されたmicroenvironment cell populations (MCP)-counter signatureを構成する109個の遺伝子のmRNA発現についてTNBCとLuminal乳がんで比較した。109遺伝子のうち67遺伝子でTNBCとLuminal乳がんとで遺伝子発現差を認めた。67遺伝子の中でB細胞浸潤に関与し複数の悪性腫瘍で予後との相関報告されているpre-B-cell leukemia homeobox 4(PBX4)と、変異によってNK細胞機能が低下しICI治療抵抗性が報告されているkiller cell immunoglobulin-like receptor 3 Ig domains and short cytoplasmic tail1(KIR3DS1)はTNBCで高発現し、GENT2に登録された502例の乳がん患者でその遺伝子発現と良好な予後との相関が示唆された。一方これらを別のBRCA変異Variantを含むDatasetでも、PBX4およびKIR3DS1はいずれも高発現しており、さらにこれらPBX4はBRCA2変異はBRCA1変異より低発現であった。
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