研究課題/領域番号 |
22K16471
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
長崎 瑛里 自治医科大学, 医学部, 助教 (70845354)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 腎ラブドイド腫瘍 / 核酸医薬 / miRNA / 標的遺伝子 / Neuropilin 1 |
研究実績の概要 |
腎ラブドイド腫瘍(RTK)細胞株(WT-CLS1、G401)を用いたmiRNA-mRNA比較統合解析により、RTK特異的に発現変化を認めるmiRNAとその標的遺伝子を同定した。そのうち、RTK細胞で低発現のmiRNAの標的遺伝子であり、かつRTK細胞株において高発現である40の遺伝子を抽出した。抽出した40の遺伝子を対象にGO enrichment解析を行い、RTK細胞における発現変動遺伝子の機能的特徴を解析すると、細胞接着に関連する遺伝子が有意に濃縮されていた。その1つであるNeuropilin 1 (NRP1)はこれまでに悪性腫瘍との関連が多く報告されていることから、RTKにおける腫瘍関連遺伝子の候補として以降の実験の解析対象とした。 RTK細胞株におけるNRP1の機能解析を行うため、siRNAを用いてNRP1の発現を抑制した。WST-8 assayを行いNRP1の発現抑制下におけるRTK細胞の生存率の変化を解析すると、WT-CLS1、 G401ともに生存率の有意な変化は認めなかった。Matrigel invasion assayを行いNRP1の発現抑制下におけるRTK細胞の浸潤能の変化を解析すると、 WT-CLS1、G401ともにNRP1の発現抑制下で細胞浸潤能の有意な低下を認めた。Wound healing assayを行いNRP1の発現抑制下におけるRTK細胞の遊走能の変化を解析したところ、WT-CLS1においてはNRP1の発現抑制下で細胞遊走能の有意な低下を認めた。G401では有意な変化は認めなかったが、NRP1の発現抑制下で細胞遊走能の低下傾向を認めた。 以上から、NRP1はRTKにおいてOncogeneとして浸潤や遊走を促進する可能性があり、RTKの新たな治療標的となりうることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RTKの新たな治療標的の候補としてNRP1を同定した。また、miRNA-mRNA比較統合解析により、NRP1を標的とし、かつRTK細胞株において低発現である8つのmiRNAを同定した。そのうちmiRNA-320aとmiRNA-320bについてPCRを行ったが、現時点では、コントロールのヒト胎児正常腎由来細胞株HEK293Tと比較して、RTK細胞株において低発現であることを確認できていない。このことから、当初予定していた培養細胞系における候補miRNAの発現変化による抗腫瘍効果を検討する実験は遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
RTK細胞株におけるmiR-320の発現解析については条件検討を行い再検するとともに、他の6つの候補miRNAについても解析を進める。発現低下が確認できたら、NRP1との相互作用を検討する。具体的には、RTK細胞において、候補miRNAの過剰発現によりNRP1の発現が抑制されるか否か、Real-time PCRおよびWestern blottingで解析する。また、候補miRNAの過剰発現によりNRP1遺伝子のプロモーター活性が抑制されるか否か、Luciferase assayで解析する。 一方で、NRP1以外のRTK腫瘍関連遺伝子の探索も引き続き行う。具体的には、mRNA-seqの解析結果をもとに、GO enrichment解析およびKEGGパスウェイ解析を行い、どのようなパスウェイをもつ遺伝子が多いのかを調べ、腫瘍進展に関与する遺伝子やパスウェイを探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の影響で研究が遅延したため。余剰金は、遅延した分の実験を行うため試薬等に使用する。
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