研究課題/領域番号 |
22K16480
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
白石 卓也 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (90881277)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 上皮間葉転換 / 癌関連線維芽細胞 / 腫瘍免疫関連因子 / desmoplastic reaction / 低分化胞巣 / 大腸癌 |
研究実績の概要 |
癌の浸潤や転移の過程に重要である上皮間葉転換(EMT)の誘導は、癌関連線維芽細胞の機能を反映するdesmoplastic reaction (DR)と癌先進部の脱分化所見としての低分化胞巣(PDC)から病理組織標本上で形態学的に分類でき、大腸癌の予後と相関していることが報告された。以前からDRやPDCは癌の病期に関係なく転移や予後との相関していることが報告されており、DRやPDCはEMTの誘導の結果を示した腫瘍間質の形態学的特徴であると考えられている。しかし、大腸癌におけるDRやPDCといった形態学的特徴と相関するEMT関連因子や、誘導されたEMTにおいて腫瘍免疫に関連する因子は未だわかっていない。そこでDRやPDCといった形態学的特徴や免疫療法の感受性と相関するEMT関連因子や腫瘍免疫関連因子を明らかにすることで、大腸癌に対する免疫療法の感受性に関連する分子マーカーを同定することを目的とした。2022年度は、EMTの誘導に関連し、癌関連線維芽細胞の機能を反映するDRと癌先進部の脱分化所見としてのPDCを病理組織標本上で形態学的に分類した。また、癌先進部のコラーゲン線維とエラスチン線維の免疫染色を行った。さらに腫瘍免疫関連因子との関係を明らかにするために腫瘍周囲のCD3とCD8、CD163の免疫染色を行い腫瘍浸潤リンパ球について評価した。今後は評価した項目をもとに患者背景因子や予後との検討や、E-カドへリンなどのEMT関連因子との検討を進めていく。現在までに腫瘍間質にコラーゲン線維の増成が多いとTリンパ球浸潤は少なく、さらに再発割合が高く予後不良であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、EMTの誘導に関連し、癌関連線維芽細胞の機能を反映するDRと癌先進部の脱分化所見としてのPDCを病理組織標本上で形態学的に分類した。また、癌先進部のコラーゲン線維とエラスチン線維の免疫染色を行った。さらに腫瘍免疫関連因子との関係を明らかにするために腫瘍周囲のCD3とCD8、CD163の免疫染色を行い腫瘍浸潤リンパ球について評価した。予定していた研究項目をこなすことができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、2022年度に評価した病理組織標本上で形態学的に分類した項目や、癌先進部のコラーゲン線維とエラスチン線維の評価結果や腫瘍免疫関連因子の評価結果をもとに患者背景因子や予後との検討を行う。また、E-カドへリンなどの既知のEMT関連因子との検討を進めていく。さらに、DRやPDCといった形態学的特徴や免疫療法の感受性と相関するEMT関連因子や腫瘍免疫関連因子を明らかにするための検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度予定していたEMT関連因子や腫瘍免疫関連因子の組織染色の一部を終えていなかったことや学会出張費として申請していた旅費を必要としなかったため次年度使用額が生じた。 2023年度は、in vitroやin vivoの実験を行う予定であり、生化学解析用試薬、各種抗体、組織染色用試薬などの費用を要する。また、研究によって得られた知見を発表するため、学会出張としての旅費や滞在費を要する。その他、研究の成果を論文として投稿するため、英文校正費、論文別刷り代が必要となる。
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