研究課題/領域番号 |
22K16481
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
大塚 亮太 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (20790786)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | サーチュイン / 食道扁平上皮癌 / 胃癌 / バイオマーカー / 機能解析 |
研究実績の概要 |
初年度に引き続きサーチュインの病理学的検討に加えて、2年度の計画として、サーチュイン発現の機能解析を行った。 食道扁平上皮癌において、SIRT1と化学放射線療法(CRT)抵抗性との関連に関する直接的な報告がないことに着目し、SIRT1発現とCRT抵抗性の関連性を調べると同時に、食道扁平上皮癌細胞株(TE5, TE10)を用いSIRT1ノックダウンがCRTに及ぼす影響の検討を行った。SIRT1高発現はCRT抵抗性と有意に関連しており、多変量解析により、SIRT1高発現はCRT奏効不良の独立したバイオマーカーであることが同定された。また、TE5およびTE10において、SIRT1ノックダウンはコントロールと比較して細胞生存率を有意に低下させ、シスプラチンおよび放射線治療に対する感受性を上昇させた。 一方、昨年度胃癌において、SIRT1の組織内での発現および血清中の濃度に関する検討を行い論文報告(Anticancer Res. 2023 Apr;43(4):1485-1491. doi: 10.21873/anticanres.16297)を行い、本年度は食道扁平上皮癌において同様の検討を行う予定とした。現時点では組織内での発現における臨床病理学的検討まで完了しており、既報と同様に高発現が有意に予後不良と関連していた。今後は血清濃度も測定し、その病理学的特性を明らかにするとともに、組織内発現および血清濃度の相関に関しても検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年度に計画していたサーチュインの機能解析に関して、SIRT1のCRT抵抗性の観点から解析を遂行した。SIRT1とCRT抵抗性に関する今年度得た知見については、現在英文雑誌に投稿中であり、今後各種学会にて成果発表を行っていく予定である。また抵抗性獲得の機序解明として、SIRT1とDNA修復遺伝子との関連を調査していく予定である。 また、食道癌におけるSIRT1の組織内発現及び血清濃度の関連の解析に関しては、組織内発現の検討までにとどまったが、胃癌において同様の検討は行っており、実験系は確立されているため、次年度に解析を行うことが可能と考えている。 以上よりおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2年度の進捗を元に、さらなる解析を進めていく。今年度は食道扁平上皮癌において新たな知見を得ることができ、更なる検討を追加していくことが可能だと考えている。 また、次年度は発現解析および機能解析の結果を踏まえた上で、サーチュインの治療ターゲットとしての可能性を検討していく。具体的には細胞株を用いサーチュイン賦活薬、阻害薬による影響を検討する。またin vivo での検討では腫瘍モデルとしてマウスの皮下腫瘍モデルおよび腹膜播種モデルを想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新規の結果を得るのに時間がかかり、国内外の学会での発表の機会が少なかったことが一因である。現在投稿中の論文掲載料や今後の成果発表に使用する予定である。またサーチュインの治療ターゲットとしての可能性の検討をin vitro, in vivoで解析するために、消耗品やマウスの購入に使用していく予定である。
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