研究課題/領域番号 |
22K16497
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
西口 由希子 奈良県立医科大学, 医学部, 研究員 (40867727)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ミトコンドリア鉄 / 抗がん剤 / 胃癌 |
研究実績の概要 |
糖化HMGB1によりミトコンドリア酸化ストレスの増加が報告されており、その背景にミトコンドリア鉄の増加が関与する。本年度は、ミトコンドリア鉄の蓄積と抗がん剤の効果について検討を行った。プテロスチルベン(PTE)は、ミトコンドリアの電子伝達系を障害することでミトコンドリアROSを増加し抗癌剤の抗腫瘍効果を増強することをわれわれは報告している。今回、抗癌剤のミトコンドリアへの2価鉄蓄積作用とPTEの併用効果を検討した。鉄蓄積性の抗がん剤(Fe+剤)としてラパチニブ(LAP)とドキソルビシン、鉄非蓄積性の抗がん剤(Fe-剤)として5-FU、シスプラチン(CDDP)、Wartmanninを用い、ヒト胃癌細胞株TMK1とMKN74を処理した。Fe+剤では単剤よりもPTE併用により増殖抑制は促進されたのに対し、Fe-剤ではPTEによる上乗せ効果は認められなかった。幹細胞マーカーCD44のmRNA発現は、Fe+剤では発現は抑制されたのに対し、Fe-剤では逆に発現は促進された。ヌードマウス皮下腫瘍モデルでTMK-1に対するLAPとCDDPおよびそれらに対するPTE併用の効果を検討した。腫瘍体積は、LAP群よりPTE併用で有意に縮小したが、CDDP群とPTE併用では有意差はなかった。上記のことから、PTE併用効果は、ミトコンドリア二価鉄蓄積性を示す薬剤に限定されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗がん剤のミトコンドリア鉄の蓄積作用の有無により、プテロスチルベンによる増感作用に差異が生じることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
抗がん剤のミトコンドリア鉄の蓄積作用の有無により、プテロスチルベンによる増感作用に差異が生じること機序について、検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
プテロスチルベンとミトコンドリア鉄の蓄積との抗腫瘍効果に対する作用を検討するため、網羅的遺伝子発現検討を行う予算を次年度に回した。
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