研究課題/領域番号 |
22K16501
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
坂本 太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60366234)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膵臓癌 / ミトコンドリア / マイトファジー / ライソゾーム酵素 |
研究実績の概要 |
まずGBA酵素活性とタンパク質発現量の評価を行った。膵臓癌細胞株と正常膵管細胞に関してGBA酵素活性を測定し、癌細胞株間での酵素活性の相違が、GBA蛋白発現量との相関を示した。またsiRNA法を用いてGBAをノックダウンしたところ、GBA酵素活性と蛋白発現量が有意に減少したことを確認した。また、GBAをノックダウンしたことにより、もともとのGBA酵素活性の大きさにかかわらず、細胞増殖抑制効果を認め、同時にアポトーシス細胞の増加、アポトーシスシグナルの増強を認めた。 神経細胞においてはGBAの遺伝子変異によりミトコンドリア障害を認めることが報告されているため、膵癌株においてGBAノックダウンによる形態学的評価を行った。GBAノックダウンにより、各細胞株で膨化したミトコンドリアの蓄積が確認され、蛍光顕微鏡下でのミトコンドリアの蓄積と、ライソソーム活性の低下も確認された。 続いて、蓄積したミトコンドリアの機能を評価するために、細胞内の活性酸素種(ROS)を評価したところ、フローサイトメトリーでの細胞内ROSの蓄積が確認された。ミトコンドリア内においてもROSの蓄積が確認され、ミトコンドリアの機能不全を示唆する結果であった。実際のミトコンドリア機能障害を評価する目的でミトコンドリア膜電位をフローサイトメトリーの間接的な測定を行ったところ、膜電位の低下を認め、GBAノックダウンで細胞内に蓄積したミトコンドリアは、膜電位が低下した不良ミトコンドリアであることが示された。 これらの結果は、ミトコンドリアを標的とした制癌経路を模索する研究の可能性を支持するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Vitroの検討において、GBAノックダウンによって膵癌細胞株でのミトコンドリアダイナミクスと細胞増殖抑制、アポトーシス誘導との関係が示唆された。さらにGBAノックダウンによるミトコンドリア機能・代謝の低下が確認できた。 本研究の仮説を支持するものであり、翌年度からの研究発展が可能である。
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今後の研究の推進方策 |
ここまで、GBAノックダウンにより不良ミトコンドリアが蓄積されることが明らかとなっており、さらに不良ミトコンドリアの蓄積の原因を評価することを検討している。具体的に、ミトコンドリアの選択的オートファジーであるマイトファジー機構を検索する。方法として、蛍光顕微鏡により蛍光色素を用いてマイトファジーを評価し、その蛍光をフローサイトメトリーで定量化し、GBAノックダウンにおけるマイトファジーの評価を行う予定である。また、オートファジー関連タンパク質であるLC3とp62の発現量をウエスタンブロッティング法で評価する。 次にマイトファジーのアポトーシス誘導との関わりを検討する予定である。GBAノックダウンによるアポトーシス誘導はマイトファジーが必要であるかを検討するために、マイトファジー阻害剤を用いることにより、阻害剤単独で用いた際と比較して、GBAノックダウンとの組み合わせが、アポトーシス細胞を誘導するのかを検討する予定としている。さらにマイトファジーの阻害が、GBAノックダウン後の不良ミトコンドリアのクリアランスをブロックするかを検出する。その検出が可能であれば、ライソゾーム酵素と抗がん剤耐性の関与に関して、ライソゾーム酵素活性低下と抗がん剤による細胞増殖能抑制効果を評価し、中期的にはGBA酵素活性への依存度が高い膵癌を標的として研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は当該年度の予算振り分けに即して進行している。残額は翌年に繰り越して、より重要度の高い経費に使用する事が使命と考える。
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