研究課題/領域番号 |
22K16513
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
徳光 幸生 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (40593299)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 癌 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、膵癌細胞株から膵癌幹細胞様細胞 (P-CSLC) を誘導する方法を開発し、カルレティキュリン (CALR) が膵癌幹細胞の新規マーカーとなること、さらには、カテプシンB (CTSB) が重要な関連分子であることなどを報告してきた。本研究では、これらの結果を応用し、トランスクリプトミクス、プロテオミクス、メタボロミクスという網羅的なアプローチを通して、これらの分子と膵癌幹細胞の相互関係を明らかにするとともに、微小周辺環境に及ぼす影響について解明することを目標とする。 P-CSLCの誘導について、これまで短期のSphere誘導と長期のラミニン上での培養を組み合わせて行ってきた。膵癌細胞株における短期のSphere誘導系では、Capan1細胞株より抗癌剤 (オキサリプラチン、イリノテカン) 耐性の亢進を示すCSLCが得られることが明らかとなった。Capan1細胞株を親株として、誘導したP-CSLCとの遺伝子発現比較をRNA-seqおよびGene Set Enrichment Analysis (GSEA) により行った。その結果、我々の先行研究と一致してP-CSLCでのALDH1A1やHIF1Aの発現上昇を認めた。さらに、肝癌CSLCより同定したCSLCエクソソーム放出に重要なRAB3Bに加えて、RAB27A/Bの発現上昇も確認された。また、GSEAからはCSLCにおける抗原ペプチドに関する負の集積が示された。 さらに膵癌手術標本を用いてRNA-seq解析を行った。手術標本には間質細胞も含まれており、免疫細胞由来のRNA発現変動に着目して解析を行った。膵癌術前化学療法 (NAC) 後早期再発 (ER) 群は、NAC後にPBMC 中のNK 細胞とCD8 陽性T 細胞の占める割合がNAC 前と比較し減少している一方で、術後長期無再発であった症例はNAC後にNK 細胞およびCD8 陽性T 細胞の占める割合が増加している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
膵癌細胞におけるエクソソームを介した腫瘍微小環境への影響や免疫逃避の可能性を示唆するデータに加えて、臨床サンプルにおいて腫瘍微小環境 (腫瘍浸潤免疫細胞) の特徴を示唆するデータが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた結果のvalidationを進めるとともに、膵癌細胞やその微小環境を反映する血中バイオマーカーについても解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度からの在庫試薬を用いることで支出が抑えられた。発現解析費用に充てる。
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