1,大腸癌切除検体から分離培養した癌関連線維芽細胞(CAF)と正常部線維芽細胞(NF)の3ペア分から抽出したmRNAを用いたmRNA microarray検査の結果、NFと比較してCAFにおいてアミノ酸輸送体のL-type amino acid transporter 1(LAT1(SLC7A5))の発現が優位に高いことを見いだした。LAT1は大腸癌を含め種々の癌組織で高発現を認め、癌進展に関与していることが報告されているうえ、LAT1阻害剤の開発も進められており癌治療の有望な標的分子であるがCAFにおけるLAT1の意義についてはこれまで報告がないため、引き続いて大腸癌CAFにおけるLAT1の役割について研究を続けることとした。 2,分離培養した細胞を用いてsiRNA transfection実験を進めようとしたが、分離培養細胞の老化が見られ増殖速度が著しく低下したため計画した細胞実験の実施が困難となった。そのため、CAF実験の実績がある施設に見学にいき分離培養ならびにその継代方法について改良することに時間を要した。また、分離培養した細胞の不死化も行うこととし、その実験場所と備品の準備ならびに実施に時間を要した。不死化に成功し、不死化CAFを用いたLAT1のsiRNA transfectionも問題なく行えることを確認している。遅れを取り戻すべく細胞実験を再開している。上記理由より研究期間中に研究成果を学会や学術誌に発表することが実現できなかった。まとまった結果がある程度揃い次第、発表する予定としている。 3,大腸癌切除標本を用いてLAT1ならびに間質マーカー(αSMA)による免疫染色を行い、それぞれのタンパク発現の相関ならびに臨床病理学的因子や予後との相関について検討を行うこととした。現在、その染色条件設定ならびに評価法について当院の病院病理部と鋭意検討中である。
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