研究実績の概要 |
①大腸腫瘍切除における腫瘍部位の特定における蛍光ガイド手術の有用性を検討した。 近赤外蛍光樹脂を使用して開発された内視鏡用クリップZeoclip FSを使用して蛍光クリップマーキング(FCM)を行う方法と、従来の点墨マーキングを使用した手術症例の視認性を比較した。2017年1月から2022年4月までに術前マーキング後に大腸手術を受けた大腸腫瘍患者305例を登録。FCM群(86例)と点墨群(219例)に分類した。FCM群では手術中に近赤外蛍光観察でマーキングの視認性を評価した。マーキングの視認性はFCM群80例(93.02%)、墨汁タトゥー群166例(75.80%)とFCMにおいて有意に良好であった(p=0.0006)。点墨群では、墨汁による術野の汚染が7例(3.20%)に認められた。FCM群ではFCMに関連する有害事象は認められなかった。大腸切除において、FCMは従来の点墨よりも視認性がよく、簡便で安全なマーキング法である可能性がある。
②下部直腸癌に対する経肛門的全直腸間膜切除術(TaTME)は難度の高い手技で, 尿道損傷の危険が高い.蛍光尿管カテーテルと近赤外蛍光観察で尿道を可視化できるかを検証した。2022年4月-2023年12月に, 尿道損傷ハイリスクとし蛍光尿管カテーテルを挿入したTa/Tp-TME手術症例17例のうち、会陰側からの術野において蛍光で尿道を認識できたのは,腹腔鏡下直腸切断術の1例, 腹腔鏡下骨盤内臓全摘術の3例であった. 全例で尿道誤損傷は認めなかった.尿道を蛍光で認識できた症例は限定されていたが, 前方マージンが必要であった直腸切断術や尿道を切離する症例では切離前に尿道を蛍光で捉える事ができていた事から, 本法は手術中に安定して継続的に尿道を視覚化するナビゲーションにはならずとも, 必要以上に尿道に寄った際の尿道損傷のアラートになる可能性がある.
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