研究課題/領域番号 |
22K16526
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川副 徹郎 九州大学, 大学病院, 助教 (20932221)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 食道扁平上皮癌 / 炎症関連シグナル / LIF |
研究実績の概要 |
がんは日本人の2人に1人が罹患し、3人に1人の死因となる疾病である。中でも食道癌は日本において罹患率の高い疾患である。5年生存率は42.5%と、食道癌は非常に予後の悪いがんの一つであり、日本では食道扁平上皮癌が食道癌の大部分を占める。食道扁平上皮癌に対する治療戦略としては手術、抗癌化学療法、放射線療法が3つの柱を担っており、予後の改善が望めるようになりつつある一方、食道癌に適応のある薬剤は従来からの殺細胞性抗がん剤、一部の免疫チェックポイント阻害薬などに限られており、他癌種と比べると分子標的治療薬をはじめとした新規治療法の開発が進んでいないのが現状である。 これまでに、食道扁平上皮癌ではIL-6ファミリーサイトカインのひとつであるLIF(Leukemia inhibitory factor)が自己分泌的な機序で癌進展に重要な役割を持っており、LIFのノックダウンにより癌進展が抑制されることを同定した。他癌腫において間質細胞がLIFの分泌源となっており、膵星細胞の活性化が膵臓癌の進展に寄与することが明らかにされている一方で、食道扁平上皮癌におけるLIFの細胞内シグナル伝達のメカニズムや間質細胞との相互作用については明らかにされていない。 本研究において、LIFの細胞内シグナルのメカニズムおよび間質細胞との関わりを明らかにし、LIFの治療標的としての意義を検討する。最終的には食道扁平上皮癌における炎症関連シグナルを標的とした新規治療法の開発を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに他癌種で示されたSFK(Src family kinase)-YAP(yes-associated protein)シグナル経路が食道扁平上皮癌においても癌進展に関わっていることが示された。当科における食道扁平上皮癌切除検体のパラフィン包埋切片を用いて、YAPの発現を認める症例は有意に予後不良であることが示された。さらに食道扁平上皮癌細胞株を用いて、SFKの阻害が癌の進展抑制に有用であることを同定した。 これまでにLIFに対する中和抗体を用いた実験を行い、結果を解析中である。また食道扁平上皮癌細胞株にLIFのノックダウンを行い、single cell RNA解析を行い、結果を解析中である。 食道の癌部、非癌部を用いて線維芽細胞の培養を開始した。非癌部から線維芽細胞を培養し、癌関連間質細胞化させた細胞を作製した。
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今後の研究の推進方策 |
食道扁平上皮癌細胞株を用いてLIF中和抗体を投与した時の抗腫瘍効果を検討する。またLIF恒常発現株を用いて食道扁平上皮癌細胞株の細胞内におけるLIF関連シグナルの挙動を解析し、検討する。LIF中和抗体を用いた細胞株をsingle cell RNA解析に提出し、LIFノックダウンを行った細胞株との炎症関連シグナルの違いについて評価する。 癌関連間質細胞化させた間質細胞を、通常間質細胞と比較検討する。RNAシークエンスでシグナル発言の違い、ELISAでサイトカインの分泌の違いについて評価する。さらに、癌細胞と線維芽細胞の共培養系を樹立して、癌細胞の悪性度について評価を行う。
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