研究課題
本研究の目的は「炎症サイトカインIL-33が、抗腫瘍活性の強いTRAIL (TNF-related apoptosis inducing ligand)発現NK細胞を低下させるメカニズムを解析する」ことである。肝臓内NK細胞は強力な抗腫瘍活性を持つが、門脈圧亢進に伴いその活性は低下し腫瘍再発の一因となっている。我々は門脈圧亢進が肝臓内NK細胞活性低下していることを見出した。この新知見をもとに、炎症性サイトカインIL-33制御が、門脈圧亢進状態の腫瘍再発を抑制しうる新規治療法となる可能性があり、臨床応用を展開するための研究基盤を確立することを将来の目的とする。門脈圧亢進症マウスモデル、肝線維化マウスモデルおよびヒト検体を用いて、炎症サイトカインIL-33が、抗腫瘍活性の強いTRAIL (TNF-related apoptosis inducing ligand)発現NK細胞を減弱させるメカニズムを解明し、肝内在性NK細胞へ与える悪影響を明らかにする。本実験では、ヒト検体を用いたIL-33のNK細胞への効果を検証し、肝臓NK細胞のTRAILの表出が減弱することが明らかとなった。抗IL-33抗体や抗炎症性サイトカインIL-37を用いることで、将来的に門脈圧亢進症を併存する肝癌患者や肝癌肝切除後患者、門脈塞栓術後患者、肝癌肝移植を対象とした炎症性サイトカイン制御による免疫賦活化療法の開発を予定している。
2: おおむね順調に進展している
本研究の目的は、炎症サイトカインIL-33が、抗腫瘍活性の強いTRAIL (TNF-related apoptosis inducing ligand)発現NK細胞を低下させるメカニズムを解析することである。ヒト検体を用いたin-vitro実験においてもIL-33との共培養により肝臓NK細胞の抗腫瘍効果は減弱した。このことは、IL-33を抑制することで、肝臓内NK細胞の抗腫瘍効果が維持されるメカニズムの解明に繋がる可能性を示唆する結果であった。以上より、概ね順調に研究は進展していると判断する。
新たに四塩化炭素を用いた肝臓線維化マウスモデルを用いて、炎症性サイトカインIL-33が肝内在性NK細胞のフェノタイプ、機能に与える影響の解析を追加する。本研究により、炎症サイトカインIL-33が、抗腫瘍活性の強いTRAIL 発現NK細胞を減弱させるメカニズムを明らかにし、肝内在性NK細胞へ与える悪影響を明らかにする。今後はIL-33の抑制機能を持つIL-37の効果やTRAIL陽性NK細胞内のシグナル解析を用いて解析し、より詳細にIL-33が持つ肝内在性NK細胞への影響を解明する。抗IL-33抗体や抗炎症性サイトカインIL-37を用いることで、門脈圧亢進症が併存する肝癌患者や肝癌肝切除後患者、門脈塞栓術後患者を対象とした炎症性サイトカイン制御による免疫維持療法の新規開発に繋がると考えている。
次年度使用額が305,924円となった。理由としては、物品費が当初の予定より支出を抑えることができた事に起因する。次年度の物品費に加算して使用する予定である。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件)
Anticancer Res.
巻: 44 ページ: 649~658
10.21873/anticanres
Annals of Gastroenterological Surgery
巻: 7 ページ: 987~996
10.1002/ags3.12702
Cancer Medicine
巻: 12 ページ: 19821~19837
10.1002/cam4.6554
Transplantation Proceedings
巻: 55 ページ: 906~912
10.1016/j.transproceed.2023.03.066
BMC Surgery
巻: 23 ページ: 86
10.1186/s12893-023-01986-9
Journal of Gastrointestinal Surgery
巻: 27 ページ: 1152~1158
10.1007/s11605-023-05624-w