研究実績の概要 |
本研究の最終目的は、腫瘍内の新生血管の正常化によって免疫療法の治療効果を増強することである。我々は、まず初めに新生血管の構築に最も関係することが明らかとなっている血管内皮増殖因子 (vascular endothelial growth factor; VEGF)と腫瘍微小環境の免疫状態との関連を明らかにするために大腸癌の手術切除検体を用いて検証を行った。T3またはT4の進行大腸癌患者(n = 135)で術前化学療法を受けなかった患者(UPFRONT群、n=54)、術前化学療法としてFOLFOXを受けた患者(FOLFOX群、n=55)、切除不能大腸癌としてFOLFOXとベバシズマブの併用療法後に切除を受けた患者(B-MAB群、n=26)に分類し、3グループ間で比較検討した。細胞傷害性T細胞数は、3群間で差はなかった。 B-MAB群では、PD-1陽性T細胞、FOXP3陽性リンパ球、CD163陽性単球の数が他の2群より少なく、それらの細胞数は組織学的治療効果との相関も見られた。これらの結果から、VEGF阻害剤は抑制性免疫細胞の浸潤を抑制し、またPD-1のT細胞での発現を減少させており、免疫環境を改善することが示され、これを報告した (Hamada. Y, Tanoue K, et al, Scand J Gastroenterol. 2023)。また我々は、VEGFをPD-1、PD-L1などの分子と共に免疫チェックポイント阻害剤の治療効果のマーカーとなり得るかを検討した。実際に免疫チェックポイント阻害剤を使用した胃癌患者の血清を用いて行った。VEGFの、予後、治療効果との関連を検証を行い論文化した。現在投稿準備中である。
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