研究実績の概要 |
本研究は、腫瘍血管の形態の違いにより腫瘍に対する免疫療法の効果に違いがあるという仮説を証明する研究であり、2022年度は腫瘍血管に作用する抗VEGF剤を使用した大腸癌の組織標本を用いて、VEGFが腫瘍内の免疫微小環境に与える影響を解析し報告した(Hamada, Tanoue, et al. Scand J Gastroenterol. 2023)。その結果に基づき、本年度は血管形成に違いが生じると報告されているVEGFのisoformの違いに着目し、胃癌患者の免疫治療効果とVEGF isoformとの関連について調べた。VEGF isoformは、従来より正確な測定が可能な鹿児島大学血管病態解析学講座で開発されたオリジナルの測定キット(Yamakuchi, Tanoue, et al. PLoS One. 2023) を使用した。VEGF isoformは、胃癌の免疫治療効果予測の有用なマーカーになり得ることを示唆する結果であった。その結果をまとめ、論文を作成し現在投稿準備中である。さらに、胃癌の手術切除検体と血液検体を用いて、組織内の腫瘍血管の性状、免疫微小環境、血液内のVEGF isoform量との関連を検討する実験を遂行中であり、これにより、上記の免疫療法との関連に関する詳細なメカニズムを明らかにする予定である。さらに、腫瘍内の遺伝子変異、ネオアンチゲンが腫瘍血管に与える影響も探索中であり、こちらは大腸手術切除検体をシーケンサーで解析を行い、現在結果を検討中である。長期生存例と早期死亡例との比較で得られた候補遺伝子とネオアンチゲンを、組織検体を用いた血管性状や免疫環境の評価と関連があるかを検証し、同時にマーカーとしての可能性を探る。
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