研究課題/領域番号 |
22K16540
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
杉本 敦史 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 学外研究員 (80897356)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エクソソーム / スキルス胃癌 / 中皮細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「胃癌腹膜転移の進展における中皮細胞の分泌するエクソソームの役割を解明し、難治性である胃癌腹膜転移の新しい治療法の開発」であり、まず研究実施計画I.「中皮細胞が分泌するエクソソームの胃癌細胞の遊走浸潤へ及ぼす影響」の検討を行なった。研究実施計画I-①.「中皮細胞が分泌するエクソソームの採取」は胃癌患者の腹水より分離培養を行い、合計4株の中皮細胞株を樹立した。樹立した中皮細胞株の培養上清を採取し、超遠心法によりエクソソームの分離を行なった。回収したエクソソームはウエスタンブロットによりエクソソームマーカー (CD9, CD63, CD81)の発現を同定し、電子顕微鏡による観察により細胞外小胞を同定し、エクソソームの存在を確認した。蛍光色素のPKH26で標識した中皮細胞株由来のエクソソームを胃癌細胞株(スキルス型および分化型)に添加したところ、いずれの胃癌細胞の細胞質内にエクソソームの取り込みが確認できた。また 研究実施計画I-②.「胃癌細胞の遊走浸潤へ及ぼす影響」は回収した中皮細胞由来のエクソソームを胃癌細胞株へ添加し、遊走能はWound healing assay、浸潤能はMatrigel invasion assay により検討した。Wound healing assayでは、中皮細胞由来のエクソソームはスキルス胃癌細胞株の遊走能を有意に促進した。一方、分化型胃癌細胞株の遊走能には影響しなかった。またMatrigel invasion assayでは、中皮細胞由来のエクソソームはスキルス胃癌細胞株の浸潤能を有意に促進した。今後、サイトカインアレイにより中皮細胞由来のエクソソームに含まれるサイトカインを解析し、胃癌細胞の遊走浸潤を促進する分子の同定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画I.「中皮細胞が分泌するエクソソームの胃癌細胞の遊走浸潤へ及ぼす影響」の検討は順調に進捗している。今後、研究実施計画II. 「中皮細胞のエクソソームが内包する胃癌腹膜転移を促進する物質の同定」および研究実施計画III.「エクソソームが内包する胃癌腹膜転移促進物質の臨床病理学的意義の検討」に進む予定である。ヒト腹膜標本については当研究室において、すでに採取済みである。
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今後の研究の推進方策 |
研究実施計画II. 「中皮細胞のエクソソームが内包する胃癌腹膜転移を促進する物質の同定」を行う。サイトカインアレイを用いて、中皮細胞由来のエクソソームの内包するサイトカインを解析する。各中皮細胞株が胃癌細胞株の遊走能および浸潤能へ及ぼす影響の違いを参照して、胃癌細胞の遊走浸潤を促進する分子の候補を選定する。候補となった物質を胃癌細胞株へ添加し、Wound healing assayおよびMatrigel invasion assayにより遊走浸潤能への影響を検討する。また、候補となった物質の中和抗体および阻害剤により、胃癌細胞の遊走浸潤促進効果が抑制されるかを検討する。以上の結果より、胃癌細胞の遊走浸潤を促進する物質の同定を行う予定である。 さらに、研究実施計画III.「エクソソームが内包する胃癌腹膜転移促進物質の臨床病理学的意義の検討」を行う。当研究室が保有するヒト腹膜標本100例を用いて、同定した胃癌腹膜転移を促 進する物質の発現を免疫組織染色法により評価し、臨床病理学的意義の検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、今年度は当研究室に保有している検体・細胞株を用いた実験・解析が多く、物品費が予定額より少なかったためである。次年度よりサイトカイン解析や免疫染色を行う予定であり、物品費を多く使用する見込みである。
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