研究課題
胆膵癌は他の消化器悪性腫瘍と比較して予後不良であり,新規治療標的分子の同定と,既存の化学療法レジメンの有効活用を図ることが早急に求められている悪性腫瘍の代表である.近年,癌治療における新たな潮流として免疫療法が注目されており,そのターゲットとしてT細胞不活化経路があげられる.免疫回避機構 には複数の分子の関与が示唆されてが,新たな標的分子として悪性黒色腫や白血病において発現が指摘されているT細胞不活化分子の一つであるCD200に着目した.今年度は胆道癌切除標本を用いて,免疫染色,Real-time PCR,フローサイトメトリーなどの種々の免疫学的・分子生物学的手法によりCD200発現と臨床病理的因子,再発・予後との等の臨床的意義を解析した.胆道癌約90例のパラフィンブロックを用いて,CD200のほかCD70,CD155,Nectin-4,HVEM等の候補となる複数の分子の腫瘍内発現と臨床病理学的因子や予後との関連を免疫染色を用いて検討した. また,膵癌の原発巣及び各種転移巣においてパラフィンブロック薄切切片の免疫染色を用いて,各種分子の発現と腫瘍内浸潤CD4+/CD8+T細胞, CD45RO+メモリーT細胞,FOXP-3等の各種腫瘍内浸潤免疫担当細胞発現と臨床病理学的因子との関連を分析し,集学的治療における免疫チェックポイント発現の腫 瘍微小環境局所内での腫瘍免疫学的意義を検証した.その結果,膵癌術後肺転移巣では他の転移巣に比較し,腫瘍浸潤リンパ球数が有意に多く,CD8/Foxp3比も 高値を呈しており,抗腫瘍免疫が活性化していると考えられた.一方,肺転移巣の腫瘍細胞にはPD-L1が高発現しており,TILsの高発現と併せて鑑み,免疫 チェックポイント阻害薬等によるこれらの制御が,膵癌肺転移に対する個別化治療として有効である可能性が示唆された.
2: おおむね順調に進展している
膵癌,胆道癌ともに免疫回避機構に関わる複数の候補分子についての検討を行っており,概ね予定通りに進捗している.
膵胆道癌におけるCD200をはじめとする各種分子の発現と腫瘍内浸潤CD4+/CD8+T細胞,CD45RO+メモリーT細胞,FOXP-3等の各種腫瘍内浸潤免疫担当細胞発現との関連を分析し,集学的治療における免疫チェックポイント発現の腫瘍微小環境局所内での腫瘍免疫学的意義を解明する.また,凍結保存標本を用いてReal-time PCRを行い,HMGB1,CXCL10,CXCL16,IL-2,IL-15,IFN-γ,Granzyme-B等の各種免疫活性化因子,各種サイトカイン,ケモカイン等の発現を解析す る.CD200及びメモリー細胞とこれらの局所免疫活性との関連について,特に早期再発例と無再発例あるいは再発後治療奏効例と無効例との比較から,CD200の機能を検討する.また,癌幹細胞との関連をCD44,CD133,CD24等のマーカーを用いた免疫染色や転写因子の検討から,治療抵抗性獲得の裏付け検証を行う.
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (37件)
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