研究実績の概要 |
低比重好中球球 (LDN) は、炎症性疾患や悪性疾患の患者の末梢血で増加し、通常の好中球と機能的に異なることが知られている。2017年から2021年の間に当科にて根治的結腸切除術を受けた患者において、手術前後に手術室で末梢血を採取し、密度勾配調製後に単核層から細胞を回収、CD45(+) 白血球中のCD66b(+) LDN の比率をフローサイトメトリーで測定し、比率と患者の転帰との関連を検討した。全患者176 人(108 結腸癌、68 直腸癌)で、ステージI、II, III、IV がそれぞれ38、30、72、36人であった。 LDNの数は手術直後に顕著に増加し、その割合は手術時間 (r=0.2806、P < 0.001) および術中出血量 (r=0.1838、P = 0.014) と正の相関があった。このLDNは短期間の培養後に大量の好中球細胞外トラップ(NET)を生成し、in vitro で腫瘍細胞を効率的に捕獲した。 再発を発症した13人の患者の術後LDNの割合は、(M=9%, 1.63~47.0%)と非再発群(M=2.93, 0.035~59.45%)と比べて有意に高かった(P = 0.013)。術後LDNの割合のカットオフ値を 4.9%に設定すると、LDN 高値群の無再発生存期間(RFS)は有意に短く(P = 0.005)、他の臨床病理学的因子を含めた多変量解析でも独立した予後予測因子であった 。 ステージ III の患者において、補助化学療法はLDN 高値群のRFSを有意に改善させたが、LDN低値群では予後に差を認めなかった。LDNは、大腸癌切除術後の早期時点で外科的ストレスによって循環血液中に誘導され、NETの産生を介して再発に関連すると考えられた。
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