研究課題
本研究の目的は、好中球の活性化型受容体LMIR4に着目して、肝臓虚血再灌流障害の分子機序を解明することである。LMIR4は好中球で発現が高く、脂質を認識するペア型受容体ファミリーに属する活性化型受容体であるが、LMIR4のリガンド分子は同定されていない。肝臓虚血再灌流障害モデルを解析すると、野生型マウスと比較してLMIR4欠損マウスでは肝臓への好中球集積の低下と肝機能障害の軽減が認められる。LMIR4が虚血障害を受けた肝臓組織で増加する分子を認識し、虚血で障害を受けた肝臓に好中球が集積すると仮説を立て、実験を進めた。正常な肝臓及び虚血障害を受けた肝臓からタンパク及び脂質を分離した。さらに、細分画したタンパクや脂質成分をプレートに固相化した後、LMIR4の細胞外領域を利用する結合アッセイとレポーターアッセイを実施した。現時点で、LMIR4のリガンド分子の同定に至っていない。しかし、細分画の手法を変えることで各成分を濃縮して実験を繰り返し、リガンド同定の手がかりを得ようとしている。また、LMIR4が骨髄由来抑制細胞に発現することに着目し、この細胞に発現するLMIR4が病態形成に関与する可能性も考慮して解析を進めた。LMIR4の有無が定常状態の好中球や骨髄由来抑制細胞の機能に影響しないことをインビトロ実験で確認した。今後、組織に存在すると考えられるリガンド存在下で、LMIR4の有無がこれらの細胞機能にどのような影響を及ぼすかを明らかにする必要がある。
3: やや遅れている
LMIR4のリガンド分子は虚血障害を受けた肝臓組織に存在すると考えられ、解析を進めているが、現時点でリガンド同定に至っていない。LMIR4リガンドの同定は関連する病態機序解明に直結するので、現在までの進捗状況はやや遅れていると考えられる。
LMIR4の発現の高い好中球と骨髄由来抑制細胞の生体内機能に着目して解析を進める。また、肝臓虚血障害を受けたマウスのみならず、様々な薬剤投与により肝障害を受けたマウスも含め、肝臓組織及び血液に含まれるタンパクや脂質の中からLMIR4リガンドの同定を試み、研究目的の達成を目指す。
現時点でLMIR4リガンドの同定に至っていないので、その分子を解析して病態機序を解明する実験ができなかった。当該助成金と翌年度分として請求した助成金を合わせて、LMIR4リガンドの同定及びLMIR4によるリガンド認識が病態形成に寄与する機序を明らかにする予定である。
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J Heart Lung Transplant.
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10.1016/j.healun.2024.04.003.